【背景・目的】
薬物性肝障害の予測法としてミトコンドリア毒性やBSEP阻害に焦点が当てられている。しかし従来の初代肝細胞培養法では、様々な肝細胞機能(薬物代謝能、ミトコンドリア機能、トランスポーター活性)が低下するため、これらに関わる適切な毒性予測ができていない。この問題を解決する方法として、酸素供給が着目されている。これまでにも酸素供給能を上げる培養手法が示されているが、薬物収着やスループット性が低いことが問題であった。そこで本研究では、新たに開発された高酸素透過性・低収着性素材で作成されたプレート(以下Tプレート)に着目し、Tプレートで初代ラット肝細胞を培養することで、肝細胞機能の向上および毒性評価ツールとしての有用性について検討した。
【方法・結果】
1. Tプレートで培養時の肝細胞機能の評価
ラット肝細胞を各プレートに播種し、解糖系最終産物である乳酸産生量を経日的に測定したところ、培養5日目の乳酸産生量がT-プレートではPSプレートの約1/10に低下した。このことから、細胞内エネルギー代謝が解糖系から酸化的リン酸化にシフトしたと考えられる。また培養4日目に薬物代謝酵素の遺伝子発現ならびに活性を評価したところ、Tプレートでは薬物代謝酵素の発現、活性ともに上昇していた。
2. Tプレートで培養時の毒性感受性の評価
ミトコンドリア毒性:培養4日目のラット肝細胞に、ミトコンドリア呼吸鎖阻害が知られるフェンホルミンを24時間曝露し、培地に漏出したLDHを細胞死の指標として測定した。PSプレートではLDHの漏出がほとんど認められなかったが、T-プレートでは濃度依存的なLDHの漏出が確認された。
胆汁酸依存的毒性(BAtox):培養4日目のラット肝細胞に、薬物と胆汁酸を共曝露し評価した。既報で代謝物がより強いBAtoxを示すクロピドグレルを曝露すると、Tプレートでその毒性が増強した。一方で、代謝によりBAtoxが減弱するフルタミドを曝露すると、Tプレートでその毒性が減弱した。
【結論】
十分な酸素供給が可能なTプレートで培養することで、各種肝細胞機能が向上し、その条件で薬物曝露を行うことで薬物代謝を加味した毒性を評価できることが示唆された。