【目的】本学が開発したハイブリッドリポソーム(HL)は、ベシクル分子とミセル分子を超音波処理するだけで調製できるナノ粒子で、がん細胞膜の物理化学性質をターゲットとしてアポトーシスを起こす新しいメカニズムの制がん剤である。細胞移植治療では、細胞培養の過程で混在した造腫瘍性細胞が、細胞移植後に生体内で腫瘍を形成するリスクとなり得る。そこで、本研究では、造腫瘍性細胞の排除に関する研究のモデルとして本研究室で実績のある正常ヒト胎児肝細胞に酪酸ナトリウム(SB)処理して肝幹細胞を誘導する方法を使用し、肝幹細胞中に出現する造腫瘍性細胞をハイブリッドリポソーム(HL)により選択的に排除することを目的とした。
【方法】造腫瘍性評価は軟寒天コロニー形成法で評価した。また、FCM解析による活性型Caspase-3の測定からアポトーシス誘導評価を行った。さらに、SB及びHL処理した細胞を継代し、SB含有培地(HL無処理)で10日間培養後、軟寒天コロニー形成試験によるHL持続効果の検討とCYP3A4活性測定による肝機能評価を行った。
【結果】軟寒天コロニー形成試験では、SB処理条件のコロニー数がコントロール(SB無処理)条件と比較して10倍以上増加し、造腫瘍性細胞の出現が確認された。一方で、HL処理条件ではコロニー数がHL濃度依存的に減少し、造腫瘍性能の抑制が示された。次に、活性型Caspase-3のFCM解析で、活性型Caspase-3がHL濃度依存的に増加したことから、HLはアポトーシスを誘導することが示された。また、軟寒天コロニー形成試験によるHL持続効果の検討では、HL前処理条件のコロニー数が低値を維持し、造腫瘍性能抑制の持続効果が示された。さらに、HL前処理条件の細胞は高いCYP3A4活性値を示し、正常な肝機能を保持する細胞が残存していることが示された。
【結論】HLは正常な肝機能を保持する細胞を残存させながら造腫瘍性細胞のアポトーシスを誘導し、造腫瘍性能抑制の持続効果をもつことが示唆された。