【目的】パーキンソン病(PD)やアルツハイマー病などの慢性疾患は数十年規模で病態が進行し、長くても10年に満たない臨床試験情報から全期間の病態を推定することは難しい。そこで我々はSReFT(Statistical Restoration of Fragmented Time course)という非線形混合効果モデルの手法を開発した。SReFTは統計学的手法によって個々人の観測断片を接続し、観察期間よりも長い期間の病態を推定する。これまでにアルツハイマー病とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の解析成果が報告されてきた(Ishida et al. 2019, Kawamatsu et al. 2020)。本研究ではSReFTをPDに適用することで、これまで明らかにされてこなかったPD長期病態の解明に挑戦した。
【方法】解析はPPMI(Parkinson@rsqm@s Progression Markers Initiative)のデータベースから入手したPD患者481名について行った。モデル構築に用いたバイオマーカーはMDS-UPDRS Total, DaT scan, SCOPA-AUT, CSF alpha-synucleinの4つである。また共変量として性別及びLRRK2関連SNP(G2019S, rs76904798)を解析した。SReFTの実行にはNONMEM及びSReFTのために新たに開発したNONMEM用プログラムであるPRED_SReFTを使用した。
【結果】SReFTによっておよそ30年のバイオマーカー変化が推定された。MDS-UPDRS Total, DaT scan, SCOPA-AUTは罹患期間内で疾患が進行する方向に変化を見せたのに対し、CSF alpha-synucleinの変化は乏しかった。また共変量解析において性別及び2つのLRRK2関連SNPすべてが有意に作用していることが明らかとなり、男性であることや変異を有することが進行を早める作用があると示唆された。
【結論】SReFTによりPD関連バイオマーカーの長期的推移が明らかとなり、また性別や遺伝多型がその進行速度に影響することが発見された。これらの成果はPD病態の理解を促進し、効率的な医薬品開発に寄与しうるものであると考えている。