Microphysiological Systemを創薬研究への応用する上で、肝スフェロイドは、薬物代謝の生理学性を高めることが期待される。我々は、初代ヒト凍結肝細胞に比べて機能が未熟なヒトiPS細胞由来肝細胞を、メチルセルロース(MC)を用いた独自の方法でスフェロイド化し、長期培養と高機能化を試みている。
 3%MC培地に細胞懸濁液を2000 cellsで吐出し、細胞凝集体を形成した。MC培地中で2日間培養後、酵素的処理によりMC培地からスフェロイドを回収した。50-150個のスフェロイドを低接着培養プレート上で12日間浮遊培養し、計14日間の培養を行った。同様に14日間の平面培養を実施し、定量RT-PCR法による網羅的な肝細胞マーカー発現プロファイルを比較し、薬物代謝酵素CYP1A2, 2B6, 3A4基質による代謝活性試験、毒性試験を行った。
 ヒトiPS細胞細胞は、MC培地中に短時間で凝集体を形成し、培養2日間で安定な球状スフェロイドを形成した。14日間浮遊培養したスフェロイドにおいて、平面培養では頭打ちとなる薬物代謝に関連する肝機能が遺伝子発現レベル(CYP1A2, 3A4などの薬物代謝酵素、抱合酵素、転移酵素、トランスポーターなど)および薬物代謝活性が劇的に亢進した。
 CYP3A4基質であるアミオダロンおよび、CYP2C9基質のジクロフェナクを用いた薬剤毒性試験では、アミオダロン単剤の毒性は、平面培養では確認されたが、3次元スフェロイドでは毒性が見られなかった。一方、ジクロフェナク単剤は、平面、3次元ともに顕著な毒性が見られなかったが、アミオダロンとの共存においては、スフェロイドにおいてのみ濃度依存的な毒性が確認され、薬物間相互作用を示唆する毒性を再現した。
 また、さらなる長期培養を目指し、添加因子X(非公開)を加えたところ、培養14日以降もスフェロイドの平滑化が維持され、28日間までの長期培養とさらなる高機能化を実現した。
 ヒトiPS細胞由来肝細胞のスフェロイドによる高機能化により、ヒト凍結肝細胞に次ぐ薬物代謝に関する生理学性の高いモデルとして期待できる。