【目的】国際骨粗鬆症財団は、世界で約2億人が骨粗鬆症に苦しんでいると推定しており、骨粗鬆症に対し多くの治療薬が開発されている。これらの治療薬は、生体外で安全性評価を行うことで使用時の安全性向上が期待できる。本研究では、骨粗鬆症治療薬等の安全性評価に用いることが可能なin vitroでの細胞アッセイ系の構築を目標としている。今回は、独自に開発したバイオセラミック培養担体上で、ヒト骨芽細胞のモデルとしてMG-63を培養し、本担体がMG-63の骨細胞分化に与える影響を評価した。
【方法】バイオセラミック担体(ハイドロキシアパタイト : β-TCP=1:1.5、プレス圧力20 kN、焼結温度1200℃)上にMG-63を6.4×103 cells/cm2で播種した。分化誘導剤として、アスコルビン酸、ヒドロコルチゾン、β-グリセロリン酸を培養培地に添加し、播種から4日後に分化誘導剤添加及び無添加MEM培地を用いて28日間分化誘導培養を行った。そして、本担体及び分化誘導剤が骨形成マーカー発現、細胞形態に与える影響評価を免疫染色及び走査型電子顕微鏡(SEM)観察で行った。
【結果】分化誘導培養に用いたバイオセラミック担体上に、コラーゲン及び非コラーゲンタンパク質の発現が確認された。また、免疫染色を行ったところ、分化誘導を行った本担体上には骨形成マーカーであるⅠ型コラーゲンとオステオカルシンが顕著に発現していることが確認でき、Ⅰ型コラーゲンは繊維状に伸展していることが示された。一方、SEM観察では、本担体上で細胞が多層化している様子が観察され、さらに細胞層間には細胞から伸びた柱状構造物が確認された。この柱状構造物の組成をエネルギー分散型X線分光法(EDS)で分析した結果、リン・酸素・カルシウムが確認された。柱状構造は生体の骨細胞が特異的に形成することから、本担体上に生体骨内に類似したリン酸カルシウム構造物が形成されている可能性が示された。
【結論】本担体が骨芽細胞から骨細胞への分化誘導に有効であることが示唆された。現在骨粗鬆症の目安となる骨密度に関わる細胞のカルシウム含有量の定量を行っており、今後、本バイオセラミック担体上での細胞のカルシウム含有量とSEM観察、EDS分析などを用いて種々の骨粗鬆症治療薬の評価を行う予定である。