【目的】がんの化学治療において、薬剤を使って治療を続けるうちにがん細胞が薬剤耐性を獲得することが知られており、この薬剤耐性の克服はがん治療における大きな課題の一つとなっている。この薬剤耐性現象の発現には、排出たんぱく質の増幅が大きく関与している。そこで、このがん細胞の薬物排出活性の亢進をin vitroで再現することが、薬剤耐性克服薬のスクリーニング系の開発には重要となる。
本研究では、様々な組織由来のがん細胞での三次元培養による薬剤耐性現象の発現と薬剤耐性克服薬スクリーニング系への応用を研究目的とした。
【方法】肝臓がん細胞(HepG2)及び膵臓がん細胞(BxPC-3)を、三次元培養担体Cellbed®(日本バイリーン社製)を用いて7日間培養を行い、薬剤排出タンパク質であるMDR1の免疫染色を行った。また、モデル薬剤として制がん剤ドキソルビシン(DOX)を用い、DOXに対する50%増殖抑制試験及び、既存の薬剤耐性克服薬であるベラパミル(VRP)またはシクロスポリンA(CsA)による効果をWST-8 assayにより評価した。さらに、Cellbed培養においてHepG2細胞からのDOX排出量を分光蛍光光度計を用いて測定し、薬剤耐性克服薬の薬剤排出阻害効果について検討した。
【結果】HepG2細胞のMDR1タンパク質の発現増大が免疫染色で示唆された。また、HepG2細胞及びBxPC-3細胞において単層培養に比べCellbed培養でDOXに対するIC50値が有意に上昇し、薬剤耐性克服薬添加条件では、IC50値は有意に低下した。これらの結果より、DOXに対する薬剤耐性現象がin vitroで再現できたことが示唆された。さらに、HepG2細胞のCellbed培養におけるDOXの排出量は、薬剤耐性克服薬添加条件で減少することが示された。
【結論】これらの結果より、薬剤耐性現象をin vitroで再現できることが示唆された。さらに薬剤耐性克服薬との併用によりIC50値が低下し、薬剤耐性克服現象がin vitroで再現可能であることが示された。これはCellbedを用いた三次元培養法が、新規薬剤耐性克服薬のスクリーニング系として有用である可能性を示している。