目的:認知機能改善を目指した創薬は盛んにおこなわれているが、近年、生薬やその有効成分にも注目が集まっている。認知機能をin vitroで検討することは難しかったが、最近我々はシナプス機能マーカーとしてドレブリンを用いたin vitroハイコンテントイメージング解析法を開発した。ドレブリンは興奮性シナプスを構成する樹状突起スパインに集積しているタンパク質で、認知機能制御に重要な役割を果たすことが知られている。本研究では、これまでにヒトの認知機能への効果が知られている生薬を中心に、in vitroハイコンテントイメージング解析法を用いてシナプス機能への影響を検証した。
方法:げっ歯類海馬由来神経細胞を培養し、培養21日目に3つの有効成分(ノビレチン、ジオスゲニン、テヌイフォリン)と5つの生薬(チョウトウコウ、ゴオウ、オウレン、オウバク、オンジ)を投与した。その後、免疫細胞染色法によるin vitroハイコンテントイメージング解析を行った。細胞数、樹状突起長、ドレブリンクラスター密度を自動解析した。
結果:ジオスゲニン、テヌイフォリン、オウレン、オウバク、オンジの投与によりドレブリンクラスター密度が低下した。このうち、オウバクとオンジは中枢神経系の興奮性伝達物質グルタミン酸の受容体の1つであるNMDA型グルタミン酸受容体依存的なドレブリンクラスター密度の低下を引き起こすことが分かった。ノビレチンとチョウトウコウはシナプス機能への影響がみられなったが、ゴオウは低濃度投与の際、ドレブリンクラスター密度の上昇が認められた。
結論:本研究で用いた有効成分や生薬のうち、ジオステニン、テヌイフォリン、オウレン、オウバク、オンジ、そしてゴオウはシナプス機能への影響が示された。特に、NMDA型グルタミン酸受容体依存的に影響を及ぼしたオウバクとオンジは、シナプス可塑性へも影響を及ぼす可能性がある。我々が近年開発したドレブリンをマーカーとしたin vitroハイコンテントイメージング解析法は、生薬のみならず様々な化合物のシナプス機能への影響を検討するスクリーニング法として有用であると考えられる。今後、ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いたスクリーニング法に応用することで、ヒトの中枢神経系に影響を及ぼす化合物のin vitroスクリーニングが容易になり、種差間のギャップを埋めることが期待される。