【目的】ゲノムワイド関連解析とメタボローム解析とを統合した大規模解析において、トランスポーター遺伝子SLC17Aの遺伝子座は、尿毒症物質であるアニオン性代謝物CMPFや4-androsten-3beta,17beta-diol disulfateなどの硫酸抱合体の血漿中濃度と関連している。SLC17Aの遺伝子座には腎(SLC17A1, 3)、小腸(SLC17A4)、肝臓(SLC17A2, 4)と組織分布の異なる4つのトランスポーター遺伝子が存在している。これまでにSLC17A1と3の基質探索を行い、複数のアニオン性薬物を基質とすること、膜電位に依存した膜輸送を行うことが確認した。相同性から、SLC17A2とSLC17A 4にも同様にアニオン性薬物を基質とすることことが期待される。そこで本研究では、SLC17A2の強制発現系を構築し、その基質となる化合物を解明することを目的とした。
【方法】hSLC17A2遺伝子発現細胞として、MDCKII細胞でのSLC17A2安定発現細胞株を作成した。また、HEK293T細胞においてSLC17A2とcalcineurin constitutive active(CA)体を一過性に共発現させた。放射性標識体を用いて、輸送実験を行った。
【結果/考察】MDCKII細胞では細胞膜への局在が認められた。HEK293T細胞では、SLC17A2単独では細胞膜への発現が極めて少ないが、CA体との共発現細胞では、細胞膜への発現が増大した。これら二つの発現系を用いて、種々化合物の細胞内蓄積量を比較した。その結果、[3H]cAMPについて、MDCKIIとHEK293Tの両実験系でcAMPの時間依存的な取り込みが観察された。この結果から、SLC17A2はcAMPを基質とし、SLC17A2を細胞内へと輸送すると考えられる。SLC17A2は肝臓のシヌソイド膜に発現することが報告されており、肝臓におけるcAMPの排出や再吸収に関わることが示唆される。今後、SLC17A2の輸送機構を明らかにするとともにcAMPを輸送する意義を明らかにする予定である。
【結論】SLC17A2はcAMPを基質とするトランスポーターである。Calcineurinとの関係も含めて、今後さらに研究を行う必要がある。