医薬品開発のコスト増大と成功確率の低下が顕在化している状態化で、効率的な研究開発が求められている。打ち手の一つとしてModel Informed Drug Development(MIDD)を用いた仮説―検証型の開発戦略に挑戦に期待値が高まってきている。
分子標的薬の早期臨床試験においては忍容性、安全性、薬物動態に加え、標的分子の疾患での意義(Target-Engagement)を適切な集団を対象に確認することで開発方針・意思決定に重要な情報を与えることが可能となる。次に、臨床開発を効率的に推進する手段として、Modeling & Simulation (M&S)を用いた投与量予測、薬効予測あるいは患者集団の絞り込みが挙げられる。経験則に基づいたPKPD解析、PBPK解析など多くの解析は論文あるいは自前の実験データを用いてその精度を高めることで開発戦略を定量的に表現する手段として活用されてきた。
臨床開発において最初に証明すべき仮説はPoCの取得である。言い換えるとモデル動物あるいはin vitro実験から示唆された薬効成績をヒトで再現するために、Right Dose to Right Patients at Right Timingという3つのRIGHT(適切性)が成立したときに仮説証明に至ると考えている。
投与量予測においては適切な血中バイオマーカーの存在した開発事例においては臨床投与量の予測に成功した事例が報告されている。Right Patients については癌領域におけるがん遺伝子測定による治療選択がいい事例であろう。PoCを確実に取得するためには病態を精緻に理解する必要がある。病態とは遺伝子、タンパク質や細胞集団の変化などが生じた結果として表現型として表現されたものと考えられる。そこで、病態理解にはこれらの生体システムを取り扱うQSPモデル用いることで開発戦略に定量的仮説を記載することが可能となる。一方で、QSPモデルの確からしさは恒に疑義の及ぶところであり、この課題を補うためにはヒト生体試料を用いた非介入研究、in vivo/vitro試験の追加による精度確認・向上が求められ、DRY-WETの連携が求められている。医薬品開発におけるQSPモデルの利活用と期待について紹介を行う。
Translational Quantitative Systems Pharmacology in Drug Development: from Current Landscape to Good Practices, Jane P. F.Bai,JustinC.Earp, Venkateswaran C. Pillai; The AAPS Journal 21, 72., 2019
Reverse Translation in PBPK and QSP: Going Backwards in Order to Go Forward With Confidence: Amin Rostami‐Hodjegan, ClinicalPharmacology & Ther.: 103, 224.,2018
A Prototype QSP Model of the Immune Response to SARS-CoV-2 for Community Development.:Dai W, Rao R, Sher A, Tania N, Musante CJ, Allen R. CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol. 10(1):18. 2021
Reverse Translation in PBPK and QSP: Going Backwards in Order to Go Forward With Confidence.:Rostami-Hodjegan A.Clin Pharmacol Ther. 103(2):224, 2018