サル用いた中枢移行に関するin vitro-in vivo相関評価 ~ヒト予測を目指して~
【目的】
血液脳関門(BBB)は脳毛細血管が構成する生体バリア機能であり、末梢血と中枢の物質移動を制御することで脳の恒常性維持に貢献している。中枢治療薬が薬効を示すためにはBBBを透過する必要があるが、透過性が低い場合や、P-glycoprotein(P-gp)等の排出トランスポーターによって脳から血管側に排出される場合がある。よって、薬物の脳への移行を評価することは中枢治療薬の開発にとって重要である。我々のゴールはin vitro試験からヒト中枢移行性を予測することであり、その実現に向けて、さまざまな動物のin vitroとin vivoデータの関係(IVIVC)を検証することが必要であると考える。また、P-gpなど種々のタンパク質発現量はカニクイザルとヒトで同程度との報告があることから、サルを用いた研究はヒト予測に有用であると考える。本研究では、サルにおける脳移行性に関するIVIVCを検証した結果を報告する。
【方法】
サルに10種市販薬を単回静脈内投与し、投与5分後に採血し、放血安楽死後に脳を採材した。血漿及び脳ホモジネート中の薬物濃度をLC-MS/MSを用いて測定し、apparent permeability coefficient(Papp)を算出した。また、ファーマコセル社製サル型BBBキットTMを用いて膜透過試験を行い、Pappを算出した。両Papp値をプロットし相関係数を算出した。また、P-gpやBreast cancer resistant protein (BCRP)、その他高分子のBBB透過の主要な経路である受容体を介したトランスサイトーシス(RMT)に関連するタンパクをLC-MS/MSで定量した。
【結果・考察】
 検討した10種の市販薬のうち、シクロスポリンを除く9種でのサルのIVIVCは良好であった(R2=0.708)。シクロスポリンは吸着の影響が大きく、in vitro試験での条件改良が必要であると考えられた。また、サル型BBBキットではP-gpやBCRPさらにRMTに関与する幾つかのタンパクの発現を確認した。発表では、これらの解析結果とヒト中枢移行性予測に向けたIVIVCの活用について議論したい。