我々は疾患モデリングや創薬支援を目的とし、ヒト臓器間ネットワークのin vitro再構築に関する研究を行っており、様々な臓器への末梢神経支配を再現することに注力してきた。生体内の様々な臓器・細胞組織の機能や構造制御に重要な役割を果たしているが自律神経である。よってヒト多能性幹細胞より心臓や肝臓等の様々な組織を誘導し自律神経細胞と共培養を行うことが有用なアプローチであると考えられるが、これまでにヒト多能性幹細胞より自律神経系を構成する交感神経細胞及び副交感神経細胞を誘導することは困難であった。この課題を踏まえて、我々はこれまでヒト多能性幹細胞より自律神経を誘導する技術を開発し、誘導過程における細胞性質変化の解析および誘導した神経細胞の機能解析を行ってきた。特に、自律神経系を構成する交感神経/副交感神経を選択的に誘導する培養条件を同定しており、本技術の優位性となっている。更に、作製した自律神経によるヒト心筋の活動制御を行った結果等、自律神経を用いた応用例について報告する。