【目的】
肝線維化において肝星細胞の活性化は中心的なキーイベントである。肝臓に障害が起こると免疫細胞が障害部位に集まり活性化し、TGF-βなどのサイトカインを産生する。免疫細胞とともに肝類洞にある肝星細胞は、これらの刺激によって活性化し線維化することが知られている。in vitroの肝毒性評価において、肝線維化は、星細胞活性化マーカーであるαSMAなどの定量によって評価されることが多い。これまでに我々は、星細胞をスフェロイド化することで星細胞の活性化が抑制されることを報告しており(AATEX, 2018)、活性化状態の星細胞は線維状の形態を示すと同時にαSMAを高発現することから、これらの形態を利用した肝線維化評価が可能であると考えた。本研究では、形態変化を指標とした肝線維化評価法として、星細胞スフェロイドをTGF-βで刺激し、活性化の抑制状態から活性化状態への変化について非侵襲的に評価できるか検討した。
【方法】
ヒト肝星細胞株LI90細胞をスフェロイド形成培養器EZSPHERE(AGC)上で6日間培養することでスフェロイド星細胞を得た。TGF-β処理または未処理のスフェロイド懸濁液をゲル化マトリゲル上に播種し、線維化を観察した。倒立型蛍光位相差顕微鏡BioRevo(キーエンス) を用いて観察および画像を取得し、画像統合ソフトウェアNIS-Elements AR(ニコン)を用いてスフェロイドおよび線維化状態を計測した。
【結果】
星細胞スフェロイドをマトリゲル上に播種すると、スフェロイドと一部の細胞が伸長したスフェロイド(線維化スフェロイド)が観察された。TGF-βで刺激すると、ウェル内における線維化スフェロイド個数の割合が増加した。
【結論】
本研究結果は形態変化によって星細胞の線維化を評価できることを示唆し、αSMAなどの活性化マーカー遺伝子の発現による評価を不要とした非侵襲的で簡便な線維化評価方法であることを示唆した。今後は汎用性を高めるため線維化判定の自動化を検討する予定である。