[1-P1-PM09] ライブ観察法を用いた口蓋突起挙上時の組織変形の解析

Author: 〇長坂 新1、崎山 浩司1、板東 康彦1、小野澤 豪1,2、天野 修1
Affiliation: 1明海大 歯 解剖、2明海大 歯 口腔顎顔面外科1
Abstract: 二次口蓋は、舌をはさむように位置する左右の外側口蓋突起が舌の沈下に伴って水平方向に挙上し、やがて正中部で接着・癒合することによってその形ができあがる。この発生過程のどこかに異常が生じると口蓋裂が発症することとなる。マウスを用いた解析によって口蓋裂発症に対する生化学的な理解が進んでいる一方、二次口蓋の正常な発生過程でその組織自体がどのように変形するのか、他の口腔組織とどのように協調しているのかなどは不明な点が多い。そこで本研究では、口蓋発生過程の中でも特に大規模な組織変形を伴う「外側口蓋突起の挙上」という現象に着目し、変形の過程を明らかにすることを目的とした。大脳原基の観察などで用いられるライブ観察法をマウス胎仔の口蓋突起に応用し、リアルタイムでの組織変形を経時観察した。条件検討の結果、6時間のライブ観察を行うことができ、口蓋突起の組織変形および組織を構成する細胞の動態を観察することができた。口蓋突起の角度変化を1時間ごとに調べたところ、口蓋突起は常に舌側方向へ挙上を続け、6時間で約12°の変形があった。また、口蓋突起の舌側はより鋭角に変形し、6時間で約17°、頬側は鈍角に変形し6時間で約2°の変形があった。さらに、組織中の間葉細胞はどの部分でもおおよそ挙上する方向へ移動していることが観察された。今回、口蓋突起挙上のリアルタイムでの観察を目指しライブ観察法の構築を行なった。その結果、6時間の組織変形を観察することができ、口蓋突起の部位特異的な変形度合いの違い、および組織内での細胞動態を観察することができた。本研究で用いたライブ観察法は市販の標識試薬を用いて簡便に組織および組織内の細胞を可視化し観察することが可能であり、マウス胎仔の口蓋突起以外の組織にも応用が可能と考えられる。

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コメント

  1. 岡村 裕彦 より:

    顕微鏡の規格,市販の標識試薬はどのようなものでしょうか?よろしければお教えください。

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    • 長坂 新 より:

      岡村先生
      ご質問ありがとうございます。
      顕微鏡は、Carl ZeissのLSM800という共焦点顕微鏡を使用しました。
      また、今回のポスターで使用した標識試薬はCYTO11という核染色の試薬です。

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    • 長坂 新 より:

      岡村先生
      ご質問ありがとうございます。
      顕微鏡はCarl Zeissの共焦点顕微鏡を使用しています。
      また、今回のポスターで用いた標識試薬はCYTO11という核を染色する試薬を使用しました。

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    • 長坂 新 より:

      岡村先生
      ご質問ありがとうございます。
      今回はCarl ZeissのLSM800という共焦点顕微鏡を使用しました。
      また、ポスターで用いた標識試薬はCYTO11という核を標識する試薬を使用しました。

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  2. 近藤信太郎 より:

    日本大学松戸歯学解剖学講座の近藤です。
    頬側と舌側の角度の違いを明確にお示しいただき、ありがとうございました。
    手間のかかる研究でしょうから、多数の個体を扱うのは難しいかと思いますが、個体差に関してはいかがお考えでしょうか。
    また、この手法は将来的には口蓋裂のモデル動物などにも応用は可能なのでしょうか。口蓋裂の発生機序が単に癒合しないだけなのか、それとも、それ以前の口蓋突起の伸展方向にも問題があるのか、といった問題を明確に示すことができるのではないかと思います。
    今後のご研究の発展を祈念しております。頑張ってください。

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    • 長坂 新 より:

      近藤先生
      ご質問ありがとうございます。
      個体差はあるようで、同じ観察条件でも変形が全く見られないサンプルなどもありました。
      条件検討を重ねたところ、決まった部位・決まった時間でライブ観察を始めると、変形も起こり、角度変化の誤差も小さいという結果が得られつつあります。
      今後もより適切な観察条件を探し、観察回数を増やしていこうと思います。
      また、今回の観察手法は組織スライスの作成、試薬での染色、顕微鏡での観察という単純な手法なので、モデル動物にも応用可能だと考えています。
      先生が仰る通り、正常な口蓋発生の理解だけでなく、口蓋裂の発生機序の理解にも役立つことが出来ればと考えています。

      激励の言葉ありがとうございます。
      今後も精進を重ねていこうと思います。

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    • 長坂 新 より:

      近藤先生
      ご質問ありがとうございます。
      個体差の影響なのか、同じ観察条件でも変形が全く見られない、ということもありました。
      ただ条件検討を重ねたところ、決まった部位・決まった時間で観察を開始すると、変形も起こり、角度変化の誤差も小さくなることが分かってきました。
      今後もより適切な条件を探し、観察回数を増やしていこう思います。
      また、今回の手法は組織スライスの作成、試薬による標識、顕微鏡での観察という単純な方法なので、モデル動物にも応用が可能だと考えています。
      先生の仰る通り、正常な口蓋の発生機序だけでなく、口蓋裂の発生機序の理解にも利用することが出来ればと考えています。

      激励の言葉ありがとうございます。
      今後も精進を重ねていこうと思います。

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