【背景・目的】Risk Based Approach(以下、RBA)の導入がGCPガイダンスに明記され、医薬品治験においてRBA実装が必須となった。RBA実装は、実施計画書の立案段階から開始されるのが望ましいが、実際には実施計画書固定後に開始されるケースが散見される。こうしたケースでは、治験開始までに実施すべきRBA業務に十分な時間を注げないことが多い。従って、限られた時間でRBAを効率的に実施するための手順や漏れなくリスクを特定するための作業の標準化が求められる。また、治験支援機関の体制や担当者の経験に依存せず、一貫性のあるRBAを行うための手順の標準化も必要である。そこで、当センターで試行した手順について、効率化、業務の適切性及び標準化の観点から検討した。
【方法】当センターで過去に支援した医師主導治験において、RBAの第一段階の手順(ステップ1)「品質管理に重要なプロセス及びデータ(critical to quality: CtQ)を実施計画書から特定する工程」で多くの時間を要した場合があった。そこで、それ以後に支援した治験では、CtQのカテゴリーとファクターを予めリスト化する方法を採用した。カテゴリーとして「試験実施」、「試験デザイン」、「安全性」、「モニタリング」、「データマネジメント」及び「実施体制」と大きく6つに分類し、ファクターとして「対象疾患」、「エンドポイント」、「収集項目」等の17項目を定めた。これをリスク管理表に組み込み、RBAを実装した。
【結果・考察】先行する医師主導治験と比較し、ステップ1に要した時間は減少した。固定された実施計画書には多々のリスクが潜んでいるため、各専門職による確認に時間を要するのが実情であるが、カテゴリーを大別することで、各職種で検討すべき領域に注力でき、CtQ特定の検討会において、その内容をより深く掘り下げることができた。ファクターをリスト化することで、データの収集プロセスに関するCtQを特定する際に、エンドポイントに関連するのか、それ以外に該当するのか等、容易に判断することができた。作成したカテゴリーとファクターのリストは、続くステップ2~4において追記修正や疑義もなく、当該事例の治験では円滑にRBAの手順を進めることができた。今後、本試行を他の治験にも適用し、実情に即したカテゴリー及びファクターのリスト化を効率的かつ標準化した手順で実施する予定である。