【目的】抗精神病薬による心臓突然死はよく知られているが、その原因のひとつに薬剤性QT延長症候群がある。QT延長に伴うTorsades de Pointes (TdP)、心室頻拍(VT)、心室細動(VF)は致死性不整脈とされ、重大な心性副作用である薬剤性QT延長症候群は、循環器系薬に次いで中枢神経薬に多いことが報告されている。そこで、FDAの自発報告データベース (FAERS) を用いて、QT延長/TdP/VT/VFの自発報告状況と患者の特徴を調査した。【方法】2017年1月~2021年12月までのFDAの自発報告データベース(FAERS)を用いて、不整脈に関連する有害事象報告を収集した。調査対象とする抗精神病薬は日本で承認されている薬剤に限定した。QT延長/TdPまたは、TdP/VT/VFの報告例のリスクは、記述統計ならびに各薬剤のreporting odds ratio (ROR) と95%信頼区間を用いて評価した。RORは年齢、性別で調整した。【結果・考察】QT延長/TdP/VT/VFの生じた全報告症例は22,079例のうち、被疑薬として抗精神病薬(定型・非定型)の関与が疑われた症例数は3,335例であった。その3,335例の有害事象の内訳はQT延長:3,024例、TdP:293例、心室細動:198例、心室性頻脈:151例であった。患者特性としては、男性が51.8%、年齢は48.6±20.6歳であった。QT延長/TdPの調整RORは定型抗精神病薬のフルフェナジン(17.5)、レボメプロマジン(13.7)、プロクロルペラジン(12.5)、クロルプロマジン(10.7)、非定型抗精神病薬のオランザピン(10.5)、クエチアピン(10.3)の順に高かった。TdP/VT/VFはフルフェナジン(41.6)、プロクロルペラジン(8.6)、ハロペリドール(6.1)、クロルプロマジン(5.4)の順に高かった。定型抗精神病薬は非定型抗精神病薬よりRORが高い傾向が見られた。我々が過去に報告したJADERの調査においても、定型抗精神病薬が非定型抗精神病薬と比較してRORが高い傾向を示しており、本結果は同様の傾向が得られた。【結論】抗精神病薬による薬剤性QT延長症候群は非定型抗精神病薬と比較し定型抗精神病薬でRORが高い傾向が見られた。従って、日常診療において、特に定型抗精神病薬の治療を行う際は、薬剤性QT延長症候群を考慮したリスク&ベネフィットの評価と心電図モニタリングが必要と考えられる。