【目的】臨床試験実施にあたり、研究対象者からのインフォームド・コンセント(IC)取得は必須である。しかし、脳卒中超急性期など治療可能時間が限られている疾患では適時に適切なICを得ることは困難であり、患者の状況によっては家族が代諾者となり得る。本研究は、医療上の緊急事態に陥った患者の代諾者となった際の臨床試験参加可否判断とその理由について調査した。
【方法】2023年3月3日~6日にWebアンケートを調査会社に委託実施した。対象は20才以上の一般市民とし、「医療従事者およびその家族」「医療上の緊急事態(脳出血、心筋梗塞など)における意思決定に関わった経験がある者」を除外基準とした。医療上の緊急事態に陥った際の臨床試験代諾者となった場面を設定し、臨床試験参加の意思決定(選択肢)とその理由(自由記述)について回答を得た。得られた自由記述はテキスト分析を行った。本調査は個人情報を取得せず、得られた結果は公表することに同意を得た上で実施した。
【結果・考察】回答は300名から得た。家族が医療上の緊急事態に陥った際、臨床試験に「是非参加させたい」35名(12%)、「参加させてもよい」95名(32%)、「決められない」112名(37%)、「できれば参加させたくない」39名(13%)、「絶対に参加させたくない」19名(6%)だった。その理由を分析したところ、「是非参加させたい」群と「参加させてもよい」群では『可能性』『助かる』が頻出語で、各群の特徴語はそれぞれ『藁にも縋る』『治療法』であった。「決められない」群では『わからない』が頻出語かつ特徴語であった。「できれば参加させたくない」群では『実験』『不安』が頻出語で『実験台』が特徴語、「絶対参加させたくない」群では『信用できない』が頻出語かつ特徴語であった。臨床試験に参加させたいと答えた人は、患者が助かる可能性に期待し藁にも縋る気持ちで臨床試験参加を決断することが示唆された。決められないと答えた人は、臨床試験の知識不足等により判断ができない可能性が示唆された。参加させたくないと答えた人は、臨床試験に対して実験台にされる不安や信用できない思いを抱いていることも示唆された。
【結論】本研究から、医療上の緊急事態に陥った患者の家族が突然の事態の中で適切な意思決定を行う難しさが浮き彫りとなった。一般市民の臨床試験に対する理解・印象は多様であり、異なる捉え方に対応する適切なアプローチの検討が必要である。