新型コロナウイルスのパンデミックは、「ワクチン後進国」である本邦の様々な問題点を明らかにした。その中には感染症予防ワクチン開発が遅滞していたため、他国との開発競争に大きく遅れをとったことも含まれる。この遅延の原因としては、国内において新規モダリティのワクチンの開発が需要や支援の乏しさから滞っていたこと、新規モダリティの開発を担うアカデミアで治験を含めた開発実績がほとんどなかったこと、等が含まれる。本邦では、このような反省を踏まえ、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」が策定され、次のパンデミックに備えるべく日本医療研究開発機構(AMED)に先進的研究開発戦略センター(Strategic Center of Biomedical Advanced Vaccine Research and Development for Preparedness and Response : SCARDA)が2022年に設置された。SCARDAの事業の1つとして、国産ワクチン等の開発と早期臨床導入のための研究と体制整備を行う「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」が行われている。この事業では、フラッグシップ拠点は東京大学が、シナジー拠点は北海道大学、千葉大学、大阪大学、長崎大学が採択された。フラッグシップ拠点の役割は、「感染症有事に備え、平時において最先端の研究の中核的機能を発揮すべく、独立性・自律性を確保した柔軟な運用を実現し、世界の研究者を惹きつける、これまでにない世界トップレベルの研究開発を行う」とされ、シナジー拠点の役割は「フラッグシップ拠点と一体となって研究開発機能を担う機関として、特に自らの強みとなる特徴を活かした研究開発等を行うとともに、他の拠点との間で相乗的な効果を発揮する研究拠点」とされている(SCARDAのHP)。各拠点での体制整備だけではなく、より迅速な臨床試験実施の体制整備と拠点間連携を目的として「臨床研究分科会」が設置され、100 Days Mission実現に近づけるべく活動を開始している。特に拠点間の連携強化、すなわち1つのプラットフォーム形成を念頭にして活動している。本講演では、東京大学拠点におけるワクチン開発のための臨床試験に向けたプラットフォーム形成の取組に加え、臨床研究分科会での活動状況について述べたい。