コロナウイルスのパンデミックによって、緊急事態に対応した創薬、エビデンス創出の必要性が再認識されるとともに、平時からの準備や体制整備の重要性が議論されている。
European Union加盟諸国(以下EU諸国)においては、多様な社会背景からパンデミックへの対応は必ずしも一律ではなかったが、医療に関しては国内視点に止まらず、全世界に通用するエビデンスの創出を重要視し、早くから国単位での研究協力体制が議論された。SARS対応の際にインフラとしてのプラットフォーム試験を完成できなかったという反省のもと、今回のパンデミックにおいては、英国及びEU諸国において極早期から多数の大規模試験が立ち上がり、医薬品、ワクチン開発企業の尽力の結果として医薬品、ワクチンの開発が進み、アカデミアは混乱する医療現場にエビデンスをもたらし毎月のように医学雑誌への発表も相次いだ。しかしながら、EU諸国及び研究組織の対応は必ずしも満足とは評価されておらず、パンデミックが一旦の終息を見せた今、多数の反省点や改善点が議論されている。
2022年5月に発出されたWHO resolution(WHA 75.8)においても、世界規模でのエビデンス構築に向けて体制整備の必要性が言及され、6月に開催されたEMAのlessons-learned workshop on Clinical Trial in Public Health Emergencyでは、小規模 underpowerの試験の競合を避け、インフラとしての臨床試験(platform trial)やprioritizationについても検討された。
European Clinical Research Infrastructure Network(ECRIN)は主にメンバー国の国際共同試験を支援するとともにガイドライン作成等のinfra整備にも関わっている。EU諸国及びUKを中心に実施されるPlatform試験のintervention specific atrialのentranceの役割を担い、独立専門家会議によってシーズを選定することで、競合を避け、リソースを効率的に配分し、大規模試験を継続的に支える仕組みに貢献している。パンデミックによって発展したこの体制は、他プラットフォームの整備事業(EU-PEARL等)のsustainability planとも強調しながらplatformの維持、運営をおこなっている。
EUがパンデミックも踏まえて何を学んで、何を整えてきたかについて、私見を踏まえて議論したい。
*本発表は個人的見解を含むため所属組織の公式見解を代表するものではありません。