「薬を処方する」という医療行為は医師が担う臨床業務の大きな部分を占めており、特に小児においては、成長・発達の要素があり、成人に比べてもその薬物動態は複雑で、効果的な薬物療法を行うためには臨床薬理学的知識は非常に重要である。それにも関わらず、医師が臨床薬理学を系統的に学ぶ機会は限られており、小児臨床薬理情報を理解し、日常臨床に充分活用できている医師は限られている。また、小児臨床薬理情報を利用したくても、そもそもデータがない、という状況にもしばしば直面することがある。2016年の調査では、本邦では約75%の薬剤の添付文書に小児に投与するための十分な情報が記載されていないと報告されている。小児では、研究のための採血をするのが「かわいそう」という保護者の心理的なハードル、体格が小さく、また採血に際して暴れてしまうことがあるなど、採血自体が容易ではないこと、採血量に関する安全域が狭い事などの理由から、薬物動態研究のための頻回の採血が許容されにくいことなどが、小児薬物動態のデータが限られている一因となっていると考えられる。このような状況の中で、小児薬物動態のデータを出していくためには、少ない採血量で血中濃度測定が可能な測定系の開発や、少ない採血点でも薬物動態解析が可能となる母集団薬物動態解析が実施できる人材の育成などが鍵となる。また、欧米と異なり、小児医薬品開発に充分なインセンティブや法的なサポートが乏しい本邦においては、対象患者が少なく、投与量や投与期間が短いなど、利益が見込みにくい小児医薬品の開発が進みにくいという状況もある。これらの問題を解決していくためには産・官・学・病院がそれぞれの役割を理解し、協力していくことが重要である。本シンポジウムでは小児科医の立場から、臨床現場で求められている臨床薬理情報や、小児臨床薬理研究を推進していくために必要なことなどを参加者の皆様の一緒に考える機会としたい。