小児用医薬品をとりまく状況は刻々と変化している。本邦では2019年に薬機法の改正が行われ、日米欧医薬品規制調和国際会議ICHにおいては2022年に小児用医薬品の開発における外挿をどのように利用するのかについてガイダンス案E11Aが作成された。
こうした状況の変化の中、小児医薬品開発および小児臨床の現場における臨床薬理的な取り組みの一つとして、臨床試験計画の最適化や小児用量用法の提案に母集団薬物動態モデルや生理学的薬物速度論(PBPK)モデルが用いられてきた。近年の産官学での知見の蓄積により、成人から小児への薬物動態の外挿については、概ね体系化されつつある。これまでの経験を元に、特に低分子に対する新生児や乳幼児への外挿を支えるメカニズムの一つとして、その分布・消失に関わる薬物代謝酵素やトランスポーター発現の発達が注目され、その情報の整理が進んでいる。一方で、高分子薬の動態や効果に関わるタンパク質について、例えば抗体薬の抗原の発達変化に関わる情報などは未だに限定的であり、その充実が待たれる。さらに、小児薬物動態における民族差や病態の影響に関する情報も整備が必要である。
2020年の日本小児臨床薬理学会誌の総説の冒頭には、「小児臨床薬理の基礎となるヒトの発達薬理学的研究を過去の研究から学び、不足している部分の新たな研究をするのが大切である。この分野の研究者が一定期間ごとにそれらの研究を教科書や総説によりまとめて報告することが必要である。」と明確に提言されている。演者もまた同様に感じており、本シンポジウムでは、日本人小児に着目し、年齢に伴う体格や生理学的変化およびPK予測への応用について紹介し、今後の課題について私見を述べる。
<参考文献>
伊藤 進. 日本小児臨床薬理学会雑誌 33(1): 1-7, 2020.
江本 千恵, 福田 剛史. 臨床薬理 51 (5): 267-276, 2020.
江本 千恵, 米山 洸一郎. ファルマシア 58 (3): 233-237, 2022.
Emoto C, Johnson TN. Adv Pharmacol. 95: 365-391, 2022.
Johnson TN, Emoto C. et al., J Clin Pharmacol. 2023. in press