日本臨床薬理学会によると、臨床薬理学とは、科学的な合理的薬物治療を志向する学問領域である。また、合理的薬物治療を実現するためには、サイエンスとしての1.創薬と育薬のための臨床試験と2.個々の患者さんを対象にした合理的薬物投与計画法とそのために役立つ臨床薬物動態学が重要で、さらに個々の患者さんの治療の基盤として3.患者さんと医療者との「治療の良きパートナーシップと信頼関係」の形成が重要であり、これらが臨床薬理学の3本柱であるとしている。
小児での安全で有効な薬物治療を実現するためには、エビデンスに基づいた小児の用法・用量、小児に関連する安全性、小児の発達薬理・臨床薬理等の情報が重要である。しかしながら、小児に日常診療で使用される医薬品であっても、添付文書の「用法及び用量」に明確な小児の用法・用量の記載がなく、「薬物動態」にも小児に関する記載がなく、「特定の背景を有する患者に関する注意」の「小児等」に「小児を対象とした臨床試験は実施していない」等と記載されているものもある。
小児の用法・用量は、小児を対象とした治験が実施され、設定されることが望ましいが、対象患者が少なく治験の実施が困難等の様々な理由で、小児の適切な用法・用量に関連する情報が少ない。そのため、医師の裁量により小児の用法・用量を設定して使用せざるを得ない。このような状況を踏まえ、厚生労働省は平成29年度から「小児を対象とした医薬品の使用環境改善事業」を行っており、PMDAも参加している。本事業では、小児の医薬品使用に関するデータベース等からの情報、文献及び海外の小児薬物治療に関する情報等、これまで得られている情報を収集・整理し、専門家により構成される検討会で評価を行い、その結果に基づき、企業による小児の用法・用量設定のための承認事項一部変更承認申請や添付文書改訂を促すとともに、添付文書改訂等に至らないものについては、本事業の委託先である国立成育医療研究センターのWebサイトに必要な情報提供を行うことで、小児に対する医薬品の適正使用の推進を目指している。
本シンポジウムでは、PMDAが小児薬物療法に関わるステークホルダーの1つとして、小児医療の従事者、アカデミア、製薬企業、厚生労働省等他のステークホルダーとともに、小児薬物療法を支える小児臨床薬理情報を充実させるために、どのような貢献ができるか議論したい。