がんは2人に1人が罹患する疾患となり、高齢化社会の到来とがん医療の進歩によって、がんサバイバーの数は急速に増加している。一方で、循環器疾患はがんに次いで死亡者数が第2位となり、高齢化とともに罹患率も上昇している。このため、循環器疾患を合併した患者に対してがん治療を実施するケースも増えている。しかし、アントラサイクリン系抗がん薬や一部の分子標的抗がん薬、ホルモン療法薬は、循環器疾患を合併した患者に投与することで、心血管毒性のリスクが増大することが臨床上の問題となっている。また最近では、免疫チェックポイント阻害薬が広範に使用されるようになったが、稀ではあるが致死率の高い心筋炎の発症が報告されており、心筋炎に対する適切な対応策の整備が急務である。こうした背景から、腫瘍専門家と循環器専門家が連携してがん治療をおこなう新たな学際的領域である「Cardio Oncology(腫瘍循環器学)」が提唱され、国内外で注目を集めている。本講演では、がん治療による心血管毒性を未然に防ぎ、早期発見・早期治療に貢献する役割が求められる時代において、がんと循環器疾患の併存状態をいかに適切に治療・管理すべきかについて、最近発刊されたガイドライン1)を参考に解説する。
1)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022; 43: 4229-4361