臨床薬理学会専門医は、「薬物治療の高度な知識と卓越した技能、経験を有し、倫理的・科学的に適正な診療ならびに臨床研究を実施、助言できる医師を,臨床薬理専門医として認定する」としている。すなわち、臨床薬理学専門医の研究・教育の活動を中心に、Institutional Review Board (IRB) の運営を含めた治験を含む臨床試験の領域において重要な役割を果たすことも期待されている。
大分大学では、創薬化学からリード化合物の最適化、非臨床における薬効・薬物動態・毒性・安全性評価試験まで包括的な研究を行い、アカデミア発の創薬を行ってきた。臨床薬理学を理解し臨床試験や治験を行うことは臨床薬理専門医の一つであると思われる。
現在は循環器内科医と臨床研究支援との2つの業務を並行して行っているが、循環器内科医として、薬物動態を考慮した診療を心掛けている。具体的には、薬物有害事象が生じた症例に対して、その血中薬物濃度を測定し、そのクリアランスを算出し、臨床症状と照らし合わせ、そのデータを診療に活かしている。臨床の現場では種々の疾患を持つ患者を対象としているため、腎機能障害や肝機能障害、心不全を有する症例がほとんどであり、添付文書に記載されている半減期と実際のクリアランスの値が異なっていることが散見され、現在症例を集積している。この薬物動態から得られる患者へのアプローチは、臨床薬理学専門医としての新たな患者へのアプローチであると感じている。一方、臨床支援業務は、臨床研究、産学共同研究、橋渡し研究、治験の実施及び支援業務の経験をもとに、研究者の立場や気持ちを理解しつつ臨床研究の質を担保し、臨床研究や治験の活性化に努めている。この臨床試験や治験の経験は、論文を詳細に読み解くスキルを身につけることにもつながり、臨床でエビデンスを用いる時にも役に立つ。
今後の展望として、バックトランスレーショナル研究が臨床薬理専門医の新たな研究のひとつとなることを提案したい。基礎から臨床へつながる研究は数多く発信されている。しかし、臨床試験や治験でエビデンスが得られているものの、時々そのメカニズムに関しては十分に説明がつかない場合がみられる。今後、臨床試験や治験で得られた所見でメカニズムの解明が不十分な点を、基礎医学の研究者などと協力してそのメカニズムに関しての研究を深めて行きたいと考えている。