【目的】薬剤の多剤使用(ポリファーマシー)は、服用する薬剤数が多いのみならず、薬剤に関連する有害事象発生のリスク増加、服用過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながると考えられる。ガイドラインに準拠した標準治療薬を使用しつつも、全体の処方薬の中で優先順位を決めて整理し、薬剤数を抑えることが望ましい。心不全パンデミックと呼ばれる現代では、虚血性心疾患を合併する患者も多い。今回我々は、6大学病院(現在さらに2大学が追加)および国立循環器病研究センターの共同研究により構築された冠動脈疾患の多施設共同データベース(Clinical Deep Data Accumulation System (CLIDAS))を用いて、慢性冠動脈疾患患者のポリファーマシーの実態を調査した。【方法】CLIDASに登録された患者のうち、2017年4月から2020年3月の間に経皮的インターベンション(PCI)が施行された症例を抽出した。少なくとも1剤以上の抗血小板薬を使用していた患者は1411人が該当し、平均年齢71.5±10.5歳で、男性が77.3%であった。本研究での合剤は、成分別に分けて使用薬剤数としてカウントした。漢方薬は1種類としてカウントした。514 [238 - 893]日の追跡期間で、PCI実施時の内服状況を調べた。また期間中の心血管イベント発症と、薬剤数およびポリファーマシーの関係も検討した。【結果・考察】既往症は高血圧1122人(79.5%)、脂質異常症1075人(76.1%)、糖尿病630人(44.6%)、陳旧性心筋梗塞191名(13.5%)に認められた。PCI実施時の患者の使用薬剤数は平均9.2種類であった。PCI実施時抗血小板薬の処方率はアスピリン97.3%、クロピドグレル48.5%、プラスグレル43.8%であった。そのほかの薬効群の処方率は脂質異常症治療薬83.1%、消化管潰瘍治療薬・胃薬82.2%、降圧薬73.2%(β受容体遮断薬54.9%)、糖尿病治療薬33.2%であった。期間中の心血管イベント発生率と薬剤数の関係については薬剤数8種類以下の群と9種類以上の群で分けたとき、主要心血管イベント(脳卒中、心筋梗塞、心血管死 ; MACE)と全死亡率は、薬剤数が9種類以上の群で調整ハザード比はそれぞれ2.245 [1.454 - 3.467 ; p < 0.001]、4.869 [2.160 - 10.980 ; p < 0.001]と有意に高かった。【結論】慢性冠動脈疾患に対するPCI施行時のポリファーマシーがMACE・全死亡率と関連した。