【目的】掌蹠膿疱症(PPP)は、手掌や足底に多発する膿疱や骨関節炎(PAO)の疼痛によりQOL低下を及ぼす慢性炎症性皮膚疾患である。中等度以上のPPPには免疫調整薬(グセルクマブなど)の治療が実施されてきたが、軽症例に対する明確な治療法は確立されてない。我々は、後ろ向き研究において抗菌薬(主にテトラサイクリン系抗菌薬;TCs)が皮膚症状の寛解までの期間を短縮すること、リンパ球・単球比(LMR)が抗菌薬の有効性指標になるうる可能性を報告してきた1)。しかしながら、抗菌薬の有効性は寛解までの期間でしか評価できていないこと、LMRの有効性指標としての妥当性を評価できていない。本研究ではPPPの重症度スコアであるPPPASI(膿疱・紅斑・落屑の各重症度と病変面積で算出)を用いた抗菌薬の有効性とLMRの有効性指標としての妥当性を前向き研究で検討した。
【方法】旭川医科大学病院皮膚科に通院しているPPP患者のうち、本研究への参加に同意され、通常診療下でPPPに対して新たに治療薬が開始された15名(抗菌薬群:11名、免疫調節薬群:4名)を対象とし、免疫調節薬群は既存治療例として設定した。有効性は治療前後のPPPASIの変化量および疼痛スケール(VAS)の変化量とした。また抗菌薬の有効性指標の探索として、治療前後のPPPASIの変化量と各種臨床検査値の変化量の相関係数を算出した。
【結果・考察】抗菌薬群、免疫調節薬群では、治療前後のPPPASIは変化しなかった。しかし、抗菌薬群では紅斑および膿疱の重症度およびVASが改善した。したがって、TCsの抗炎症作用により、皮膚症状やPAOが改善した可能性が示唆された。一方、既存治療の免疫調節薬群では鱗屑の重症度が改善し、紅斑、膿疱、VASも改善する傾向が見られた。そのため抗菌薬は、PPPやPAOに対する新たな治療選択肢になりうる可能性が示唆された。PPPASIの変化量と各臨床検査の変化量の相関では、抗菌薬群においてリンパ球、LMRは正の相関を示した。LMRは、先行研究の結果1)と一致していることから抗菌薬の有効性指標として有用であると考えられた。また、血小板・リンパ球比(PLR)および好中球・リンパ球比(NLR)は負の相関を示した。PLR、NLRは本研究で初めて相関が見られたため、今後LMRと組み合わせることでより精度の高い指標として有用である可能性が示唆される。
【結論】抗菌薬治療を行うPPPでは、LMRが有効性の指標となる。
【参考文献】1) 岩山訓典ら. 医療薬学, 46: 567-575 (2020).