【目的】エダラボンは日本および米国を含む世界の複数の国で静注および経口製剤として筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に用いられている.エダラボンの薬物動態(PK)は,これまで複数の臨床薬理試験において検討されてきたが,ALS治療の用法用量(60 mgを60分で点滴静注または105 mgを経口・経管投与)での日本人および非日本人でのPKを直接比較できるデータは限られている.異なる用法用量のPKデータを統合した母集団薬物動態(PPK)解析により,エダラボンのPKプロファイルを比較検討し,PKに影響を及ぼす要因を探索した.
【方法】エダラボンを静脈内投与および経口投与した日本人または非日本人における臨床試験から得られたPKデータを統合し,非線形混合効果モデルを用いたPPK解析により評価した.まず静脈内投与後のPKデータを用いて,飽和消失過程を組み込んだ3-コンパートメントモデルによりPPKモデリングを行った.続いて経口投与後のPKデータを加え,モデルに1次吸収過程を加えて拡張し,最終モデルとした.静脈内投与後および経口投与後のエダラボンのPKに及ぼす内因性・外因性要因の共変量を探索し,共変量がPKに与える影響をシミュレーションにより検討した.
【結果・考察】PPK解析には経口投与および静脈内投与後の415名の被験者からなる計7534時点の血漿中エダラボン未変化体濃度を用い,エダラボンPKを共通の最終モデルにより記述することが出来た.最終モデルには体重,被験者集団(ALS患者・健康被験者),製剤組成,および併用薬が有意な共変量として組み込まれたが,体重以外の要因はエダラボンの静注製剤および経口投与製剤のPKに影響を与えないと考えられた.非日本人の日本人に対するAUC,Cmax,ss比は,それぞれ74.3%(90%CI:69.8~79.2%),76.9%(90%CI:71.3~83.0%)であり,非日本人のAUCは日本人に比して有意に低い結果が得られた.しかし,AUCの比の信頼区間の上限は80%にきわめて近く,Cmax,ssについては信頼区間の上限が80%を超え臨床的に意味のある影響はなかったことから非日本人/日本人の人種差はないと考えられた.
【結論】エダラボンのPPK解析の結果,曝露量について人種(非日本人/日本人)による臨床的に意味のある差は認められないと考えられた.