【目的】喫煙に伴う健康へのリスクの主な要因は,たばこ葉を燃焼させることに伴って発生するたばこ煙中の健康懸念物質と考えられている。加熱式たばこは,燃焼を伴わずに加熱によってエアロゾルを発生するため,たばこ煙に含まれる燃焼に由来する成分が低減されており,喫煙に関連する疾患リスクを低減する可能性がある。本研究ではmRNAとmiRNAのデータ解析により加熱式たばこ使用による生体影響を調査した。
【方法】「健康な成人喫煙者を対象とした5日間入院での新型加熱式たばこDT3.0a使用におけるたばこ煙中に含まれる成分への曝露量を評価する試験(UMIN000045304)」の保管検体を使用した。被験者は喫煙継続群(CC),加熱式たばこ使用者群(DT3.0aまたはTHS),禁煙群(SS)にランダム割付された。割付日のDay 1と調査最終日のDay 6時点において被検者から採取した血液を使用し,mRNAおよびmiRNAを解析した。各群について,miRNAによる遺伝子発現抑制を受けないmRNAを確認の上,Day 1からDay 6で変動したPathwayとUpstream RegulatorsをIngenuity Pathway Analysis(IPA)により解析した。各群のPathwayおよびUpstream Regulators結果について,IPAによるクラスター解析を実施した。
【結果】クラスター解析の結果より,加熱式たばこ使用者群はSSと同様のPathwayが摂動していた。これらのPathwayには炎症系プロセスや細胞傷害に関連したPathwayが含まれ,加熱式たばこ使用者群とSSはCCと比較して同様の挙動を示した。さらに,Upstream Regulators解析の結果より,加熱式たばこ使用者群のサイトカインはCCと比較して低下し,SS側にクラスター分類される傾向があった。
【結論】5日間の加熱式たばこ使用により,喫煙継続時と比較して炎症系プロセスおよび細胞傷害が低下し,禁煙時と同じ傾向を示す可能性がある。