【目的】「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(2014年8月文部科学大臣決定)のもと、日本では研究公正教育が急速に普及してきた。今後の課題は、研究公正の推進に向けた取り組みを、より実効性のあるものにしていくことであろう。そのためには、研究現場における研究公正の実態と課題を把握することが欠かせない。そのような認識のもと、発表者たちは研究公正の実態把握のための質問紙調査を開発し、2021年に国内の7大学の協力を得て調査を実施した。しかし、臨床研究の現場では、研究活動の実態が大学等で実施されているものとは大きく異なっている。そこで、臨床研究における研究公正の実態を把握するにふさわしい質問紙を開発することが本研究の目的である。
【方法】臨床研究に関わる研究機関や部局等で研究公正に関わる研究者や職員等に対して、2021年に実施した調査で利用した質問紙とその調査・分析結果を提示したうえで、臨床研究の特性や、臨床研究において同様の質問紙調査を実施する際の課題についてヒアリング調査を行った。なお、ヒアリング調査は現在、継続して実施中であり、本報告はその中間報告である。
【結果・考察】これまでの調査で、臨床研究においては、臨床医をはじめ多様な関係者が共同研究に関与すること、多施設間で共同研究が実施されることなど、共同研究の実態や研究への関与のあり方が、研究活動が主たる業務として位置づけられる大学・研究機関と大きく異なることなどが明らかになってきた。また、臨床研究に固有の課題や、共同研究への関与の仕方が多様であるため、対象者をどのように設定するかについても検討が必要なこと、中核病院のような施設とそうでない機関などの機関の多様性を踏まえた質問紙の開発が必要なことが明らかとなった。
【結論】これまでのヒアリング調査から、臨床研究における研究公正の実態把握にあたっては、研究を主要業務とする大学・研究機関を念頭に開発した質問紙における質問項目が、一定程度、そのまま利用可能な一方で、臨床研究に固有の質問項目を新設する必要がある。また、調査の実施方法についても検討を行う必要がある。そのうえで、臨床研究の現場で活用できる質問紙の開発を実施していく予定である。