【目的】これまでの半世紀以上にわたる吸収促進剤研究の成果がバクスミー点鼻粉末剤やセマグルチド経口投与製剤等のバイオ医薬の粘膜吸収型製剤の実用化につながり、これまで注射による投与を余儀なくされていたバイオ医薬の非・低侵襲性投与製剤化が加速している。吸収促進剤は細胞内透過型と細胞間隙透過型に大別され、後者では細胞間隙を介した非特異的な物質流入リスクが懸念されているものの、未だその詳細は明らかになっていない。そこで本研究では、独自の細胞間隙制御分子(claudin/angulin binder)をレギュラトリーサイエンスプローブとして使用し、透過物質の分子量、荷電の2つの観点から吸収促進作用特性に係る情報収集を試みた。
【方法】2細胞間のタイトジャンクション(bTJ)に対する作用性吸収促進剤としてC-CPE関連分子(claudin binder)、3細胞間のタイトジャンクション(tTJ)に対する作用性吸収促進剤としてangubindin-1(angulin binder)を使用した。評価には、Caco-2細胞の単層膜培養系を用い、経上皮電気抵抗値(TER)を指標に粘膜バリア制御を解析した。また透過物質の特性を評価するため、種々の分子量をもつFITC-dextran、carboxymethyl (CM)-dextran(負荷電)、及びdiethylaminoethyl (DEAE)-dextran(正荷電)を使用した。なお、平均分子量4,000、10,000、20,000、40,000、70,000、150,000のFITC-dextran、平均分子量4,000、40,000のCM-dextran、DEAE-dextranを実験に供した。
【結果・考察】Caco-2細胞のTERは、C-CPE関連分子、もしくはangubindin-1の添加により48時間まで濃度依存的に低下した。これらの分子を併用すると単独処理に比して有意にTER低下作用が増強していた。次に、各種dextranの透過性を解析したところ、分子量依存性が認められ、C-CPE関連分子もしくはangubindin-1単独処理に比して、併用処理により透過促進作用が亢進していた。興味深いことに、物質の荷電により透過促進活性に違いが認められた。
【結論】細胞間隙作用性の吸収促進剤を含有する製剤の適正使用に際しては、吸収促進剤と薬効成分の特性を考慮した薬物間相互作用評価等も考慮する必要性が示唆された。