【目的】
BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬の開発により、慢性骨髄性白血病(CML)患者の予後は大きく改善した。特に第二世代BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬であるダサチニブは、第一世代のイマチニブと比較して治療反応性が早く、高い臨床効果を有する。ダサチニブの治療到達率は定常状態血中濃度と関連することが知られている。一方で、胃内pHの上昇によってダサチニブは顕著な薬物濃度の低下を引き起こすため、胃酸分泌抑制薬であるH2受容体拮抗薬(H2RA)およびプロトンポンプ阻害薬(PPI)による薬物相互作用に注意が必要と考えられる。しかしながら、これらの薬剤がダサチニブの治療効果にどのような影響を与えるかについては明らかになっていない。そこで本研究では、レセプトデータベースを用いて、H2RAおよびPPIの併用時のダサチニブの治療効果について検討を行った。
【方法】
Japan Medical Data Center(JMDC)のレセプトデータを用いて、ダサチニブによる治療を受けた患者を調査対象とした。ダサチニブにH2RAまたはPPIを併用した群とダサチニブ単剤群を比較し、ダサチニブから他のチロシンキナーゼ阻害薬への薬剤変更およびCMLの悪化による死亡をイベントと定義し、カプラン・マイヤー法でイベントの累積発生率の曲線を作成し、その後ログランクテストで群間の差を比較した。さらに、ダサチニブ服用期間におけるH2RAまたはPPI併用期間の割合が40%、60%、80%を上回る場合をそれぞれ層別化し、イベント発生の有無に対する影響について、フィッシャー検定を用いて解析を行った。
【結果・考察】
調査期間における対象症例は743例であり、そのうちイベントが発生した症例は163例であった。ダサチニブとH2RAまたはPPI併用群とダサチニブ単剤群におけるイベント発生までの期間は、二群間で有意差は認められなかった(P= 0.858)。同様に、H2RAまたはPPI併用期間との相関についてもイベント発生の間に有意な差は認められなかった。
【結論】
本研究の結果から、CML患者においてH2RAやPPIの併用はダサチニブの治療効果に影響を与えないことが示唆された。