近年、医薬品開発における意思決定のための手段の一つとして、薬物動態、薬理反応、有効性や安全性に関する情報や生体や病態の情報等をモデル解析により統合し、構築されたモデルを利用して得られる推定結果を利用する、Modeling & Simulation(M&S)の手法が注目を集めている。このようなM&Sを利用するアプローチは、Model-Informed Drug Development(MIDD)として、定量的な観点からの意思決定を手助けし、より効率的な医薬品開発につながるものとして、臨床試験のデザインの検討や用法・用量の選択等、医薬品開発をはじめとする様々な場面で活用が進んでいる。
本邦では、2019年以降、MIDDに関連する3つのガイドライン『「母集団薬物動態/薬力学解析ガイドライン」について』(令和元年5月15日付け薬生薬審発0515第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)、『「医薬品の曝露-反応解析ガイドライン」について』(令和2年6月8日付け薬生薬審発0608第4号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)及び『「生理学的薬物速度論モデルの解析報告書に関するガイドライン」について』(令和2年12月21日付け薬生薬審発1221第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)が発出されている。また、欧米をはじめ、海外の規制当局からもMIDDに関連するガイドラインが複数発出されており、医薬品開発等におけるM&Sの適切な利用の促進の一助となっている。
このような状況のもと、医薬品規制調和国際会議(ICH)において、MIDDに関する国際調和に向けた議論が行われている。MIDDに関する国際調和の可能性について議論するため、2021年1月に、Model-Informed Drug Development Discussion Group(MIDD DG)が設置された。MIDD DGでの議論をもとに、MIDDに関連する将来的なガイドラインの作成等についての検討内容が示されている(MIDD DG roadmap)。MIDD DG roadmapの提言も踏まえ、2021年11月には、MIDDに関する新規トピックとして、「General Principles for Model-Informed Drug Development」(ICH M15)が採択され、MIDDに関する一般原則を示すガイドライン作成に向けた議論が行われている。
本講演では、MIDDに関する規制当局の取り組みと国際調和の動向等を紹介する。なお、本発表は、発表者の個人的見解に基づくものであり、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の公式見解を示すものではない。