2011年にPfizer社が米国で実施したトルテロジンのREMOTE試験が、DCT(Decentralized Clinical Trial)の先駆けと言われているが、2011年以降欧米においては様々なスタイルのDCTが立案・実施されてきた。我々も、2019年に日本製薬工業協会医薬品評価委員会臨床評価部会内にタスクフォースを立ち上げ、「来院に依存しない臨床試験手法の活用」に向けた検討を開始した。しかしながら、海外と国内の現状比較等を取りまとめ、企業側にDCT導入の考え方を発信するに留まり、2020年に拡大したCOVID-19に対する臨床試験に広く活用することは叶わなかった。臨床試験に対するCOVID-19の流行による影響として、海外においてはRECOVERY試験等のPragmatic Trialが成果をあげ、DCTに関しても加速度的に導入が進み始めてきているなど臨床試験のスタイルが大きく変化してきた。国内においても、DCTの一つの要素であるeConsentに関するガイダンスとして本年3月に厚生労働省より「治験及び製造販売後臨床試験における電磁的方法を用いた説明及び同意に関する留意点について」が発出されるなど、DCTの取り組みが注目されてきている。しかしながら、海外ほどDCTが活用される環境が整っていないのが現状であろう。
医薬品開発においてはグローバル試験が一般的になりつつある現在、グローバル共通のDCTプラットフォームで実施する日も近いかもしれない。また、昨今の医薬品開発においては、希少疾患等に対する開発割合も増加してきている。このような状況下において、患者に負担が少ないスタイルのDCT要素を取り入れた臨床試験が適宜実施できる体制になっていることは重要と考える。国内で取り組みが進んでいない理由として様々な課題があげられるが、早期に産官学が連携してDCTを実施できる体制を構築していく必要がある。今回のシンポジウムの場においても、産官学が連携してDCTを推進していくための課題整理と今後の取り組みについて、前向きに意見交換したい。