Decentralized trial(以下、DCT)の発展に必要な体制や法規制等について、European Union加盟諸国(以下EU諸国)の例を挙げて議論したい。
EU諸国においては、家庭医やかかりつけ薬局等の制度が古く、プライマリケアを対象とした試験が1990年代から試みられてきたともと言われているが、近年のコロナウイルスのパンデミックによって、より体系的に必要要件の整備がなされた。
地理的に近郊にあっても多様な規制や民族、社会的背景の隣国とのコラボレーションが多い欧米諸国においては、試験の立ち上げや、伝統的に国際共同研究が多く、その運営の経験が豊富である。また、早くから患者参加型の試験が行われてきた歴史もあり、被験者の治験に対する意識も高いという背景が整っている。DCTの目的、実施の運用に関しては、各所で議論されているため反復は避けるが、EU諸国では、上述の背景の元、DCTは受診困難な患者に対する試験参加への選択肢といった役割には留まらず、試験の多様性、全般化可能性などの特徴を踏まえてより適切なデザインやオペレーションの一つとして積極的によってDCTを選択している傾向がある。また、European commission(EC)等からの公的資金のプロジェクト研究が政策策定等に先立つことが多いEUにおいて、DCTに関しては、data sharing、EHR(Electronic Health Record)の利用、薬剤提供方法など、規制のハードルと思われる各場面において、ガイドラインや規制のposition paperの発出が早く、先導する意識が強いようにも思われる。また、DCTの発展を議論する際にはそれのみではなく、周辺の関連項目(特に、プラットフォーム試験構築等)を体系化し、関連づけて議論している。
European Clinical Research Infrastructure Network(ECRIN)は主にメンバー国の国際共同試験を支援するとともにガイドライン作成等のinfra整備にも関わっている。また、EU非加盟国とも共同研究により大規模試験に耐えうる体制構築とその調整に貢献している。ECRINは毎年メンバー国に向けてInternational Clinical Trial Day に一つのテーマを取り上げた全体会議を行っているが、2023年ではDCTを取り上げた。
今回は規制当局の方針や事例(PANORAMIC、ECRAID PRIME等)を含む当会議関連の公表内容を紹介しつつEUの現状についてご紹介したい。 *本発表は個人的見解を含むため所属組織の公式見解を代表するものではありません。