アルツハイマー病に代表される認知症は脳神経内科医が診る稀な疾患ではなく、高血圧症のように日常臨床で毎日接する当たり前の疾病となっている。生活習慣病のような一般的な疾病に比べ認知症の発症・進展が社会に大きな影響を及ぼす理由は、本人のみならず介護者も含めた周囲への影響が著しく大きいためである。特にアルツハイマー型認知症では、本人の病識が乏しく、物盗られ妄想などが頻発するため、介護者の心身の負担が大きいだけでなく、介護のための離職や収入の減少などにつながるケースも少なくない。本講演では、認知機能低下をきたす疾病を鑑別するためのポイントについて、わかりやすく概説するとともに、それぞれの疾病の発症機序や病理学的特徴などにも触れてみたい。その上で、治療薬の選択、薬の使い分け、使用上の注意点などについて、開業医の視点でリアルワールドにおいて私自身がどのように薬剤選択を行い、投与量を加減しているかなどもご紹介申し上げるととに、アルツハイマー病治療の新薬も含めた最新知見などについても触れてみたい。一方で、非薬物治療にどのようなものがあるか、認知症カフェや若年性アルツハイマー病への取り組みなど、私が開業している尼崎市における取り組みなどを披露したい。そして最後に、難治性進行性神経難病であるアルツハイマー病患者を看取るために必要な社会基盤整備、すなわち地域包括ケア、全世代的医療、ACPなど国や自治体が何を考えて取り組んでいるのか、私自身が地域社会の中で多職種と連携しながら行なっている活動の内容なども紹介し、認知症を社会全体で見守る仕組みを皆さんと一緒に考える場としたい。