近年、様々な循環器疾患の治療において、新たな薬物治療および非薬物治療の進展が見られている。医療における薬物治療の基本的理念は、有害な副作用を最小限に抑えつつ、最大限の薬理効果を得ることにある。心血管疾患患者の管理において、適切な薬物療法は極めて重要である。抗凝固薬や抗不整脈薬などは、血栓や不整脈のリスクを低減することにより患者のQOLや予後を改善する一方で、出血リスクや薬剤による副作用による弊害の懸念もある。適切な薬物選択と投与法において、薬物の特性や薬物間の相互作用を考慮した上で、患者に対する適切な薬物療法を選択する必要がある。個々の薬物において、副作用、相互作用、薬物耐性などの問題を解決するために、特に抗不整脈薬を用いた治療では薬物治療モニタリング(TDM)が重要な役割を果たす。また、患者のもつ臨床背景は様々であり、合併疾患を考慮した治療選択が必要となる。さらに、近年では遺伝的背景も加味した個別化医療が実現されつつある。循環器疾患における非薬物治療を選択する場合でも、エビデンスとなる多くの臨床試験では、適切な薬物治療を行った患者を対象としてその治療効果が示されている。医療現場では、多くの場合、医師、薬剤師、看護師など異なる専門家が連携して患者の治療に取り組んでいる。循環器疾患患者に対する適切な薬物治療を行うためには、薬物治療に関する知識や情報を共有した上で、チームとして最良の治療法を決定する必要があるが、臨床薬理学の果たす役割は大きい。患者に対して治療を行うチームの一員となる循環器科医として、薬物治療に関する知識を提供するとともに、安全で効果的な治療を実践する重要な役割を果たしていく上で、これまでの様々な臨床研究を通じて学んだことを共有したい。