【目的】
COVID-19流行下においては、無症状者を介した感染拡大が懸念されてきた。2020年2月にダイヤモンド・プリンセス号において発生したCOVID-19集団感染では、643名の感染者のうち約18%が無症候性と報告された。先行研究ではSARS-CoV-2 infectivityのピークは症状発現前であることが提唱されてきた。このような背景のもと日本の大手企業では、職員の感染に対する恐怖心を無くし、集団感染を防止するための対策を行ってきた。本研究では、事業継続と感染拡大防止に対する定期的唾液PCR検査による無症状感染者の積極的スクリーニングの有用性について調査した成果を報告する。
【方法】
SB新型コロナウイルス検査センター株式会社で唾液PCR検査を受けたソフトバンク株式会社職員を対象とし、唾液PCR検査においてCt値40以下の場合に無症候性感染者と定義した。2020年10月から2022年5月における無症候性感染者の経時的変化を調査し、日本国内及び対象企業における有症状者を含めた感染者数の推移と比較した。また、唾液PCR検査実施前後における職員の意識変化について調査した。
【結果・考察】
調査期間中に月毎に約1.4回の頻度で唾液PCR検査を実施し、延べ検査数は102,104人であった。無症候性感染者の推移は国内および対象企業におけるCOVID-19感染者数の推移と同様の傾向にあった。唾液PCR検査で抽出された無症候性感染者は313人(0.31%)であった。対象企業におけるCOVID-19感染者の月平均発生率(0.45%)は、日本における月平均発生率(0.34%)の約1.3倍であったが、これは無症候性感染者の積極的スクリーニングによるものと考えられた。意識調査では、回答が得られた3,082人のうち2,416人(78.3%)が、検体採取の簡便さや感染の有無を確認できる安心感から継続受検を希望していた。また590名(19.1%)が、さらなる感染対策を講じるなど前向きな行動変容を示し、より安心して業務に取り組めるようになったことが伺えた。
【結論】
以上より、企業等における定期的唾液PCR検査による積極的スクリーニングの導入は、感染症パンデミックにおいて無症候性感染者の早期抽出と隔離ができるという点で事業継続の安定感をもたらし、感染拡大防止に貢献できる有効な対策であると考えられた。