【目的】慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療として、バルーン肺動脈形成術(BPA)と可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるリオシグアトとのハイブリッド療法が日本では主流となっている。BPA治療はCTEPH患者の肺循環の血行動態を改善させるため、血管拡張薬の強度を変化させる可能性が考えられる。BPA治療前後でリオシグアトの血中濃度を測定し、リオシグアトの薬物動態の変化を検討した。【方法】リオシグアト服用中のCTEPH患者9名(男性2名、女性7名)を対象に、BPA治療前とBPA治療終了3ヶ月後の平均肺動脈圧、肺血管抵抗、NT-proBNP測定、並びに6点(リオシグアト服用前、1回量服用後0.5、1、2、3、5時間)の静脈採血を施行した。LC/MS/MS法により、リオシグアトの血中濃度を測定し、1日服薬量と体重で補正してAUC0-5hを算出した。【結果】1. 全症例でBPA治療後はWHO-FCはIと改善し、NT-proBNPは正常値まで低下し、BPA前と比較して平均肺動脈圧と肺血管抵抗の低下を認めた。2. BPA後のリオシグアトAUC0-5hは、25%以上の変化を有意とみなす時、BPA前と比較して5症例で増加、1症例で低下、3症例で変化なしを認めた。9症例のBPA治療前とBPA治療後におけるリオシグアトAUC0-5hの幾何平均値 (幾何学的変動係数)はそれぞれ、1.91(0.96)、2.23(2.31)でP=0.164であった。【結論・考察】9症例のBPA治療前後のリオシグアトのAUC0-5hの有意差は認められなかったがBPA治療後にリオシグアトのAUC0-5hが増加傾向を認めた。そのアセスメントとしては、BPAによって酸素化が改善し、消化管からのリオシグアトの吸収が上昇した可能性が考えられた。