【目的】注意欠陥・多動性障害治療薬アトモキセチンおよび抗うつ薬パロキセチンはシトクロムP450 2D6 (CYP2D6)のプローブ薬として知られており、後者はCYP2D6阻害薬としてもよく知られている。CYP2D6遺伝子には野生型であるCYP2D6*1に比較して、CYP2D6*10などの酵素機能低下を伴う変異が多数報告されている。本研究ではアトモキセチンおよび阻害剤であるパロキセチン投与ヒト肝移植マウスから得られた体内動態情報からアトモキセチンおよびその代謝物のヒト体内動態を予測した。【方法】ヒト肝移植マウス血中および尿中のアトモキセチンおよび二種の酸化的代謝物濃度およびパロキセチン濃度を実測した。簡素な生理学的薬物動態(PBPK)モデル手法でアトモキセチンのヒト血中および尿中濃度推移の予測を試みた。さらにアトモキセチンを服用している小児患者の血中薬物濃度との比較を行った。【結果と考察】パロキセチン前投与したヒト肝移植マウスのアトモキセチンおよびアトモキセチン脱メチル体のAUCは、パロキセチン投与なしに比較して高値を示した。一方、アトモキセチン水酸化体濃度はパロキセチン前投与により低値を示した。ヒト肝移植マウスの実測血中濃度から、ヒト仮想投与血中濃度曲線を作成したところ、本薬服薬小児患者血中濃度に一部一致した。さらに、パロキセチン前投与ヒト肝移植マウスのアトモキセチン血中濃度推移からヒトCYP2D6*1等の野生型アレルを有しないヒトのアトモキセチンおよび代謝物の血中濃度推移を予測したところ、小児患者血中濃度にほぼ一致した。予測尿中アトモキセチンおよび代謝物濃度比は野生型アレルの有無によって相違があることが推察された。以上のことから、パロキセチン前投与ヒト肝キメラマウスから小児患者血中および尿中濃度の予測が可能であると推察された。【結論】CYP2D6阻害剤併用および非併用ヒト肝移植マウスのアトモキセチン体内動態情報からヒトアトモキセチン体内動態予測が可能であると推察された。アトモキセチンの小児患者にいて非侵襲的に採取可能な尿中薬物濃度からCYP2D6遺伝子型の予測の可能性が示唆された。