【目的】心筋梗塞(MI)は心不全の主要な発症要因の1つである。MI後の心不全発症過程において、炎症細胞、特にマクロファージが産生するTGF-βが重要な役割を演じることが知られている。TGF-βはTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3の3つのアイソフォームが同定されている。これまで、TGF-βの研究ではTGF-β1に焦点を当てたものがほとんどであった。本研究では心不全新規治療法の開発を目指し、マクロファージ分化におけるTGF-β3の機能を明らかにすることを目的とした。
【方法・結果】C57BL/6J雄性マウスの左前下行枝を結紮することでMIモデルマウスを作製し、心臓組織における各種TGF-βの経時的な発現変動を定量的RT-PCRにて解析した。その結果、TGF-β1はMI後4日目、TGF-β3はMI後7-14日目に発現がピークを迎えたことから、TGF-β3はTGF-β1とは異なった発現様式を示すことが明らかになった。そこで次に、骨髄由来マクロファージ(BMDM)分化系を用いて、in vitroでマクロファージにおけるTGF-β1、TGF-β3の発現様式を検討した。C57BL/6J雄性マウスの脛骨から骨髄を採取後、セルストレーナーを通して骨髄細胞を単離した。溶血処理後、M-CSFを含むRPMI1640で6日間培養することで、BMDMに分化させた。骨髄細胞とBMDMでTGF-βの発現を定量的RT-PCRで比較した結果、TGF-β1は発現に差が認められなかったのに対し、TGF-β3はBMDMで発現が上昇した。そこでTGF-β3のマクロファージ分化への影響を明らかにするため、培養骨髄細胞をTGF-β3で刺激し、Flow cytometryにて解析を行った。その結果、TGF-β3刺激群において、M2マクロファージを示すF4/80+CD206+細胞の割合が顕著に低下することが明らかになった。更にTGF-β3の発現を定量的RT-PCRにて解析した結果、TGF-β3刺激群においてTGF-β3の発現が上昇する傾向にあった。以上から、TGF-β3はM2マクロファージ以外のサブセットが産生しているものと考えられた。
【考察】本研究から、TGF-β3はM2マクロファージ以外のサブセットにより産生され、骨髄細胞のM2マクロファージへの分化を抑制することで炎症反応を遷延する可能性が示唆された。