【目的】心機能が低下した心不全(HFrEF)に対しては、テンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アンジオアルドステロン拮抗薬(MRA)およびSGLT2阻害薬は標準治療薬として投与することが推奨されている。しかしながら、高齢化や多くの合併疾患などにより導入が困難な心不全例も存在する。生存退院したHFrEF患者を対象として、退院後の基礎治療薬の導入率について調査を行った。【方法】2015年9月~2019年8月の期間に、東京女子医科大学循環器内科に心不全の診断で入院した患者を対象に行った前向き研究登録症例1410例のうち、HFrEFの診断で生存退院した270例を対象として、患者背景、退院時薬物治療と1年後の薬物治療を調査した。【結果・考察】平均年齢は63歳、女性は196例(73%)、虚血性心疾患例は66例(24%)であった。ACE阻害薬/ARBは退院時227例(84%)に対して1年後に230例(85%)、β遮断薬は退院時223例(86%)に対して1年後248例(92%)、MRAは退院時166例(61%)に対して1年後177(66%)で処方されていた。1年後のACE阻害薬/ARBの有無および1年後のβ遮断薬の有無で生命予後を比較したところ、投与群は非投与群に比して死亡率は低かった。【結論】本検討ではHFrEFに対する標準治療薬の導入状況について調査を行い、退院1年後の時点でも導入率に大きな変化は認められなかった。心不全において薬物治療による予後改善効果が示されている一方で、実臨床での有効な使用方法の確立が望まれる。