【目的】本邦の高血圧治療は、高血圧治療ガイドラインに沿って行われており、5年毎に改訂されて最新は2019年版である。降圧目標も変更が行われており、2014年の改訂では多くの群で10mmHg上がり、2019年の改訂では10mmHg下げられている。一方で、ガイドラインの改訂が高血圧治療に及ぼす影響については報告が乏しく、治療実績と高血圧治療薬の使用実態との関係性から調査した。
【方法】2008から2020年の隔年6月1日から7月31日の期間に、新都市医療研究会[関越]会 関越病院にて継続して外来受診した成人患者を対象とした。高血圧症への薬物治療を実施中の患者を抽出し、二次性高血圧症患者を除外後、処方情報・患者背景・外来診療時血圧を調査し、比較検討を行った。調査は実施施設の倫理審査委員会にて審査、承認の後に行った。結果は平均値±標準偏差、またはパーセントで表記した。
【成績および結論】調査年毎の対象患者は最小で2,350名(2012年)、最多で3,063人(2016年)であった。降圧目標達成率は2009年改訂直後の50.5%(2010年)が最も高く、経年的に悪化し2019年改訂直前で41.1%(2018年)、直後で34.0%(2020年)であった。診療室血圧は2010年131.5±17.0 / 74.3±10.5 mmHgが最も低く、2018年136.6±17.3 / 74.8±12.6 mmHg、2020年137.9±18.1 / 74.8±12.4 mmHgと有意に上昇した(収縮期血圧: P<0.001 vs 2010)。高血圧治療薬は、Ca拮抗薬およびARBとACE阻害薬の合計が各々70%前後で推移したのに対し、チアジド系利尿薬は2010年の15.1%をピークに2020年の8.3%まで減少していた。薬効群別併用剤数は2012年の2.04±0.99剤まで上昇し、その後減少して2020年は1.87±0.88剤であった。特にCa拮抗薬およびARBの単剤また併用のみで50%にて推移しており、多くの患者がこの2剤でコントロールを試みており、利尿剤を含めた3剤併用は5%に留まった。
 2014年の改訂をきっかけに、血圧コントロールが悪化して降圧目標達成率は低下した。臨床的イニャーシャの存在も無視できない状況であり、2019年の改訂による達成率改善はされていない。2020年1月から始まったCovid-19のパンデミックによる影響は不明であり、調査を継続すると共に今後の課題である。今回の結果から利尿薬の利用を推進することで、達成率の改善が期待される。実臨床下における高血圧治療は更なる積極的治療が必要であり、治療上の改善の余地が残されていることが明らかとなった。