【目的】2022年4月に施行された民法の改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。この改正により、臨床研究の実施においては18歳と19歳が参加する場合に代諾者からの同意が不要となる等の影響があった。そこで成年対象臨床研究を実施するにあたり、研究対象者の年齢下限を一律に18歳に変更して問題はないか添付文書記載内容を基に調査した。また、添付文書上の成人とは15歳以上を示すが、それ以外の成人・小児等用法又は用量区分表記のある薬剤の有無も併せて調査した。
【方法】医薬品医療機器総合機構の医療用医薬品情報検索webサイトを用いて、2023年5月末時点での添付文書の「警告」、「禁忌」、「効能又は効果」、「用法及び用量」、「重要な基本的注意」、又は「特定の背景を有する患者に関する注意」に関して16歳から25歳の間で区分付けのある薬剤、及び「骨端線」、「成長板」をキーワードとした調査を行った。
【結果・考察】「用法又は用量」の区分年齢を15歳以外で設定している医薬品はいずれも18歳を区切りとしており、用法又は用量の観点からは18歳以上を成年臨床研究の対象にすることで特に注意すべき点はないと考えられた。ただし、小児試験未実施の薬剤は、20歳未満への投与経験がない一方で15歳以上への投与が認められている。小児用医薬品開発の非臨床安全性試験ガイドラインでは、中枢神経系の発達と成長板の閉鎖は18歳以降にも起こりうるとしている。当局指示により、抗うつ剤を24歳以下の患者に投与する場合は自殺念慮・企図の増加リスクとベネフィットを考慮する必要がある。骨端線が閉じていない患者に対し、アバロパラチド酢酸塩及びテリパラチド投与は禁忌であり、コンドリアーゼ、エトレチナート、トレチノイン、タミバテロン、セルペルカチニブ、デノスマブ及びボソリチドの投与は慎重に期する必要がある。なお、フィナステリド、デュタステリド及びコンドリアーゼでは20歳未満での安全性及び有効性が確立されていない。特に神経系や成長・骨形成等に影響のある薬剤を使用した成年対象臨床研究を計画する際は、対象年齢下限を吟味し、場合によっては安全性に配慮した新たな選択基準を設定する必要があると考えられた。
【結論】成年対象臨床研究を計画する際には、対象下限年齢を一律に18歳とするのではなく、添付文書記載事項を確認した上で設定する必要がある。