【目的】
全例調査は市販後に医薬品を使用した全症例を対象とした使用成績調査であり、国内治験症例が少ない場合や、重篤な副作用の発現が懸念される医薬品において承認時の条件として付与され、実施される。これまで全例調査の実施状況については幾つかの研究がなされており、その実態や全例調査が安全対策として有用に機能しうることが報告されている。しかしながら、製薬企業が負担するコストや医療従事者の負荷といったリソースの観点や、観察研究としての限界に考慮し、より効率的な安全監視活動の実施方法についての検討が必要であることも示唆されている。
そこで、本研究では、承認条件として付与された事項や全例調査の規模・調査期間について調査を行い、全例調査の手法や運用の変遷、あるいは安全対策としての実効性について検討を行った。
【方法】
2000年4月から2020年3月までに日本で承認された医薬品のうち、承認条件や指示事項として全例調査が課せられた医薬品を対象とした。情報収集は、PMDAのウェブサイトや製薬企業のウェブサイト等の公開情報をもとに収集を行った。
【結果・考察】
2000年4月から2020年3月までに日本で承認された全例調査が課せられた医薬品277品目のうち、「一定の期間」あるいは「一定の症例数」といった限定条件での全例調査とされた医薬品を特定し、詳細な検討を行った。「一定の症例数」の限定条件が設定された医薬品において、当初設定された目標の症例数を大きく超えて実施された調査が少なからず存在していた。また、目標の症例数を収集しているにも関わらず、承認条件が解除されるまでの期間、当該医薬品の投与実態の把握や、追跡可能性を確保すること等を目的として症例登録を継続している医薬品も一定数存在した。
【結論】
希少疾病や抗悪性腫瘍薬においては、全例調査は、使用実態下における安全性を迅速かつ適切に把握・評価する手段として有益であると考えられる。しかしながら、研究の効率性の観点からは、目標症例数を過度に超えて情報を収集することは避けた方が良いと思われる。また、「国内治験症例が少ない」「重篤な副作用の発現が懸念される」医薬品において、全例調査が常に最適な安全監視の手法かどうかについては熟慮される必要があると考える。