【目的】ドラッグラグの状況は、各成分が各国で初めて承認された日の差を算出した結果として示されることが多い。しかしこの方法では、初承認後の各薬剤の効能追加のラグを表現することができず、国民の健康アウトカムの観点からの機会損失の評価を行うことが難しい。本研究では、各国が承認した効能の相違を考慮し、効能ベースで日米および日欧のドラッグラグの状況を記述し、近年の動向やその要因を探索した。【方法】米国において2013年から2021年の間に初めて承認された医薬品データを、FDAのウェブサイトから収集した。診断用薬および同一成分薬が既承認の薬剤は除いた。対象となった376個の新薬に対して、2023年6月までに承認された効能追加を収集した。「併用」「治療歴」「年齢層」の条件追加は除外した。米国のこれらの承認効能について日本と欧州における承認の有無を調べた。これらの薬剤について、初回承認時と効能追加時の各極における申請日と日米・日欧間の申請ラグを収集した。抗がん剤については、各効能の市場規模の代替変数として、承認された効能が国内がん罹患数上位5位に含まれるかをダミー変数として収集した。解析にはStataMP15を用い、有意水準としてp<0.1を採用した。【結果・考察】日米欧3極で承認を取得した薬剤は165薬剤、追加効能は92効能だった。3極で2つ以上の共通の効能を取得した薬剤は38薬剤で、追加効能は47効能だった。抗がん剤は18薬剤で、追加効能は32効能だった。日米欧3極で承認された薬剤について、初回承認(n=165)と効能追加(n=92)の申請ラグの平均を比較したところ、日米ラグ・日欧ラグともに、後から追加された効能の方が申請ラグが短くなることが確認できた。3極で複数の共通の効能を取得した38薬剤に着目し、後から追加された効能(n=47)の申請ラグを被説明変数、各薬剤の初回承認時の申請ラグを説明変数とし回帰分析を行ったところ、日米ラグも日欧ラグも初回承認時の申請ラグと正に関係していた。分析対象を抗悪性腫瘍薬に限定し、がん罹患数ダミーを加えて分析したところ、日米ラグとがん罹患数ダミーが負に関係していた。【結論】効能追加申請に係るドラッグラグについても、企業のLCMの方針、対象疾患の特徴・地域差などが関係しており、また、最初の申請とは異なる戦略がとられている可能性が示された。