【目的及び方法】
日本からの積極的な国際共同治験(Multi Regional Clinical Trial:以下、MRCT)参加推進のため、「国際共同治験開始前の日本人での第1相試験の実施に関する基本的考え方について(平成26年10月27日)」(以下、Ph 1の基本的考え方)を含む複数の通知が厚生労働省から発出されている。Ph 1を実施する主な目的は、被験薬のヒトでの初期忍容性及び薬物動態(PK)を評価することである。日本からMRCTに参加するためには、これら通知に従い、外国人Ph 1成績があったとしても原則日本人でPh 1を実施している。一方、「Ph 1の基本的考え方」には、MRCT参加前に日本人でPh 1を実施しないことが許容される場合もあると記載されているが、その事例は限られている。
昨今、新薬を早期に市場に届けるために、ヒト初回投与試験を含め開発の早期段階からMRCTとして治験を実施する機会が増えてきている。日本では、通知にある通りMRCT参加前に日本人Ph 1を実施することが基本となっているため、日本人Ph 1が存在しない場合、MRCTへの参加機会の減少及び参加遅延が生じ、欧米諸国と同時開発を進める障壁となっているケースも見受けられる。
日本人Ph 1を実施せずMRCTに参加した事例について、「Ph 1の基本的考え方」発出後の2014~2022年の事例を調査した。これらの開発品目事例をもとに、1)MRCT参加前の日本人の評価、2)MRCTに参加するための課題、3)早期からMRCTに参加することのベネフィット等について考察した。
【結論・考察】
日本人Ph 1を実施せずにMRCTに参加したいくつかの事例を経験した。これらの事例より、非臨床情報及び外国人Ph 1の結果から検討した安全性情報、民族差の検討、同種同効薬を用いたMIDDによるPK特性及び用法用量の推定等、MRCTに参加するための事前検討が重要であると考えられた。また、日本人の安全性確認のための追加検討や詳細なPK評価等、日本のみMRCTのプロトコール改訂を実施した項目も存在した。
今後日本がMRCTに参加する機会はますます増加すると考えられる。非臨床及び海外情報から安全性の懸念や民族差が生じる可能性が低いと考えられる薬剤では、日本人で最初の臨床試験としてMRCTに参加し、日本人の安全性及びPKの評価ができる可能性もある。今後更なる事例蓄積が重要であり、欧米諸国と同時に国際共同開発及び上市ができることを推進したく、近年の取り組みを紹介する。