先進的な技術と発想力で次世代医療を牽引し、世界中の患者さんに革新的医薬品を提供することなどが「製薬協 産業ビジョン 2025」として製薬協から発信されて久しい。日本はアメリカ、スイス等と並ぶ世界でも有数の新薬創出国であるが新薬創出のプロセスには諸外国に比較してやや違いがある。欧米においてはアカデミア、スタートアップ企業、製薬企業が有機的に連携するコミュニティーが形成されている。その結果、シーズはアカデミアで創世され、それをスタートアップ企業が引き継ぎ、中~大規模臨床試験を製薬会社が担い、承認取得をするケースが散見される。かつて日本企業の多くの創薬プロセスは自社内で基礎研究、臨床開発を実施する自前主義がとられてきたが、近年こうしたアカデミアとの連携が進みつつある。
激化している新薬創出競争の時代において求められるものは、1;アカデミアの革新的で唯一無二なアイデアの提供~具現化、2;一定の失敗を許容できるような研究、早期臨床開発の実行やスタートアップ企業の支援や育成、3;スムーズな橋渡し研究・共同研究・企業間連携、大規模臨床試験実施や商用製造投資への意思決定を製薬企業が担う などであると考えている。さらに加速が進む中ではシーズ探索を得意とする集団、モダリティー創出を得意とする集団、医薬品候補分子の洗練あるいはモダリティー選択を得意とする集団などを掛け合わせた協業が今後ますます増加するものと考えられる。
中外製薬においてはトシリズマブ、アレクチニブなどアカデミアとの協業によりグローバルで人々の健康に貢献できる薬剤の創出に成功した。シーズ探索と開発はそれぞれアカデミアの強い部分と製薬会社の強みを融合した成果であると考えている。当然のように、開発段階では両者の考えの違いについて十分な議論を交わし、気づきを得て製品の価値最大化にもつながる選択肢を採択する場面もあった。さらに、近年ではシーズ創出に特化したシンガポールに存在する自社関係会社からの画期的抗体医薬品が治験段階にある。こうした外部連携を振り返り今後の医薬品開発への期待を述べる。