特定のゲノム異常に対して、複数のがん種にわたる適応症を目指す、抗悪性腫瘍薬開発が盛んになっている。例えば、PARP阻害薬は、BRCA遺伝子変異陽性の乳癌、卵巣癌、前立腺がん又は膵癌に適応を有する。B-RAF阻害薬は、BRAF遺伝子変異陽性の悪性黒色腫、非小細胞肺癌又は結腸・直腸がんに適応を取得した。HER2抗体薬のラスツズマブは、HER2陽性の乳癌、胃癌、唾液腺癌又は結腸・直腸がんに適応を有し、HER抗体薬物複合体のトラスツズマブ デルクステカンは、HER2陽性乳癌、胃癌又は、HER2変異陽性非小細胞肺癌に適応を有する。 がん種を問わない適応症を有するものがある。例えば、免疫チェックポイント阻害剤のペムブロリズマブは、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)又は、腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する固形癌という適応症を有する。又、ROS1/TRK阻害剤のエヌトレクチニブは、「NTRK 融合遺伝子」を有する固形癌という適応症を有する。 がん遺伝子パネル検査の臨床導入により、短時間に網羅的なゲノム解析が可能となり、ゲノム情報に基づく探索的な個別化医療が進みつつある。 このような背景の中、実地がん臨床において、臓器横断的な悪性腫瘍の知識と経験を有する専門家が必要とされている。最新のがん薬物療法開発と現状のがん診療における課題について考える。