日本国内では近年、NTRK融合遺伝子陽性固形がんに対して使用されるTRK阻害薬に代表される臓器断的な薬剤の承認が相次いでいる。海外では臓器横断的に薬剤開発を行うバスケット試験が実施されており、米国食品医薬品局(FDA)による臓器横断的な薬剤の承認は日本より多い。今後は日本での承認薬剤も増加することが期待される。標準治療や保険承認薬に乏しいがん種では臓器横断的な治療が重要である。包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)検査は次世代シークエンサーを用いたがん遺伝子パネル検査により、治療標的となる遺伝子異常を検索することを目的に行う。コンパニオン検査は標準治療として確立された保険承認薬の適応判断のために行われるが、CGP検査はがん種に関わらず多数の遺伝子異常について解析を行い、症例ごとのがん遺伝子プロファイルを得ることができる。CGP検査は結果を基に承認薬だけでなく、遺伝子異常を標的とした未承認薬の臨床試験や治験、先進医療等を含む幅広い治療選択肢を検討、提案する根拠となるが10%程度とされる治療到達や地域差等の課題がある。名古屋大学医学部附属病院ではがんゲノム医療中核拠点病院として愛知県、岐阜県のがんゲノム医療連携拠点病院17施設とともに、毎週20例/回前後の症例でエキスパートパネルを実施し、2021年8月から2023年3月までに2113症例を検討した。院内でCGP検査を行う際にはゲノム医療センターでの検査適正確認やアドバイス、C-CATへの症例登録を行い、薬剤師、病理部、認定遺伝カウンセラーなど多職種で検査実施に関するサポートを行っている。2019年のCGP検査開始時より2023年3月までに538件のCGP検査を実施し、治療到達率は10%以下に留まる。その内、承認薬が多くを占めるが適格条件や地理的な理由から治験参加が難しいケースも散見され、患者申し出療養を基とするNCCH1901試験が重要な選択肢となっている。本シンポジウムでは名古屋大学医学部附属病院におけるCGP検査の現状とCGP検査における課題について議論する。