DCTは医療機関への来院に依存しない臨床試験とも呼ばれる。現在、臨床試験の様々なプロセスについてその手段が多く議論されている。たとえばeConsent、オンライン診療、訪問診療、ウェアラブルデバイス、治験薬配送などの手段は日米欧問わず広く議論されている。
DCTでの採血は、日本よりも欧米で多く報告が見られる。新しい採血デバイスを用いることで、被験者単独で採血作業を行うことが技術的には可能となっている。また、これらのデバイスは血液を担体上に乾燥状態で保持することで、生体試料を室温で安定的に扱うことを可能としている。実際にこれらのデバイスを用いた臨床試験の結果は欧米にて多く報告されており、実行可能性が検証されている。その一方でDCTでの採血に伴う課題も指摘されている。分析技術の面からは、新しい採血デバイスでは試料量が少量となるため、低濃度の薬物等が検出できない場合があること、不安定な薬物や担体からの抽出回収率に課題がある薬物には適用が難しいことが指摘されている。また、来院に依存した臨床試験に比べ、生体試料の保存温度や保存期間の幅が広くなるため、通常よりも数多くの条件で生体試料中安定性を確認する必要がある。また、試験管理の面からは、在宅の患者が自ら採血した場合、提供された生体試料が本人のものであるか、時間通り採血されたかという確認が不十分となることが指摘されている。
日本ではDCTにおける採血に関する報告は欧米よりも少なく、その内容も異なる。DCTで採血する方法として、日本で議論されることが多いのは訪問看護師とサテライト医療機関の活用である。訪問看護師については労働者派遣法の制限があること、訪問看護師に臨床試験業務に関わっていただくための教育プログラムが整備されていないことなどの理由から、多数の臨床試験で訪問看護師を活用できるようになるにはまだ時間を要すると考えられる。加えて、訪問看護師では生体試料の前処理に技術的限界があると考えられる。サテライト医療機関については少数の実施例が報告されているが、契約の負担やサテライト医療機関の業務負担の課題があることが指摘されている。
本発表が患者中心の治験の推進や、国際治験への日本の継続的な参画の一助となれば幸いである。