医薬品開発ツールとしてのバイオマーカーは、有効性や安全性の指標として医薬品開発の効率化をもたらすと期待されている。バイオマーカーの開発には、臨床上の有用性と共に、その分析法に関する信頼性確保が必要である。しかし医薬品の場合と異なり、バイオマーカーはその用途、測定方法、変動幅、個体差等の要因が、マーカー毎に大きく異なる。また内因性物質であるため、マトリックス中に測定物質が含まれている場合が多く選択性等の評価が困難、高分子の場合は糖鎖等の構造が組換え体の標準物質と内因性物質で一致しない、等の特徴もある。これらの問題のため、医薬品を対象とした生体試料中薬物濃度分析法バリデーションガイドラインに沿った評価は必ずしも適切でなく、Fit-for-purposeでバリデーションを行うことが重要とされている。しかし、承認申請に必要なガイドラインは発出されていない。
そこでAMEDの支援の下、製薬協やJBF等の協力でLC/MS法とリガンド結合法を対象に、バイオマーカーアッセイバリデーションに関する留意点文書の作成を行い、2021年9月に公表した(Ohtsu et al., Bioanalysis, 2021;13(18):1379-1389)。本留意点文書は、バイオマーカー分析結果を医薬品の特徴付けを行う目的で承認申請資料に記載する際の分析法バリデーションに関して、記載されている。さらに班会議における議論に基づき、バイオマーカー開発段階等での分析法バリデーションの目安例についても追記した。さらに2021年度からは、DNA/RNAバイオマーカーを対象にしたqPCR法による分析法バリデーションに関し、留意点文書の作成を行い、こちらも最終化を行った(Sun et al., Bioanalysis, in press)。これら留意点文書が、医薬品開発時のバイオマーカー利用を促進することを期待する。
さらに実際のバイオマーカー開発に、本留意点文書を適用した。即ち、薬剤性間質性肺炎の重症型であるびまん性肺胞傷害を対象に新たなバイオマーカーであるStratifinを探索・検証したが、その際、留意点文書に基づき、平行性や真度・精度等8項目の分析法バリデーション評価を行った。(Arakawa et al., Nature Commun 2022;13(1):5854.)。
本講演ではこれらの概略を紹介する。